1号

□DRAGON of SIGNAL
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「涼野」

迷いの森の最深部、大きな滝とサッカーグラウンドがある広い場所。
そこの隅で小さくなっているあいつの名前を呼ぶ。
気付いたあいつがこっちに振り向いた。
全身氷のようなヤツ−ガゼル。
いや、“元”ガゼルか。

「南雲か。どうした?こんなところにまで来るなんて」

「どうしたじゃねえよ。オメーが急に居なくなったって大騒ぎだったんだぞ?」

「…それは悪い事をしたな。帰ったら皆に謝らないと」

涼野はどこか他人事のような口調で寂しげに笑った。
そして神経質そうに前髪を触る。
自分の思い通りに行かない時によくやる癖だ。

「今度出ていく時は誰かに言ってから行けよな。いちいち捜すのも面倒クセーからよ」

「ああ。そうするよ」

お得意の皮肉も飛んで来ない。
これは相当参ってるな。

「エイリア学園が無くなった事、まだ根に持ってんのか?踏ん切りが付いたってあの円堂守にも言ってたじゃねえか」

「…根には持っていない。だが、完全に割り切れたワケでも無い」

涼野がスッと顔を伏せた。
やりにくくてオレはぐちゃぐちゃと髪を掻き回す。

「…何故わたしたちは…何も疑問に思わなかったんだろうな」

消えそうな声で涼野が呟いた。

「…は?どう言う意味だよ?」

思わず大きな声で聞き返した。
すると、涼野は一瞬五月蝿そうな顔をオレに向け、再び顔を伏せる。

「エイリア石を与えられ、言わばルール違反の状態で相手に勝つ。それが正しくて、それが出来るわたしたちが特別なのだと、何故一つも疑わず今まで過ごしてきたんだろうか。今考えれば、誰が見ても間違いだと分かるのに」

涼野が血が滲むほど拳を握り締めた。
こうやって自分の中だけで怒りを溜めるヤツが一番恐いんだよな。
一回爆発すると手が付けられなくなるから。

「…仕方ないよ。その時はそれが一番正しい。そう信じて行動するのが人間と言う物だからね」

「!?」

言葉と共に人影が現れた。
オレたちの前方から現れたそいつは、ケツまである長い髪の毛をサラサラと靡かせて優雅に近付いて来る。
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