1号

□鉄塔広場
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日もすっかり落ちた稲妻町のシンボル鉄塔広場に、ザワザワと人の話す声が聞こえている。
その中で一際大きな気合いが入った声が響いた。

「どりゃあぁあああっ!!」

吊り下げられたトラックのタイヤを突き飛ばし、戻ってきた所を声の主円堂が渾身の力を込めパンチで止める。
ビリビリと空気が震え、タイヤを支えている木がみしりと音を立てた。

「うわっ!びっくりした…」

あまりの衝撃に隣にいた緑川の体がビクッと跳ねた。
緑川だけでなくその場にいたイナズマジャパンのメンバーも、驚いたり耳を塞いだりと様々なリアクションをしている。

「マジン・ザ・ハンドだって正義の鉄拳だってマスターしたのに、特訓方法は変わらないんだな」

後ろのベンチに腰掛けていたオレはため息混じりに声を掛けた。
それに気付いた円堂はオレの方に勢いよく振り返る。

「ああ!キーパーとして強くなるにはこれが一番だからな!風丸もそう思うだろ?」

円堂がニヒッと笑った。
その笑顔にオレもつられて微笑み返す。

「それにしても、この場所もすっかり“皆の”鉄塔広場になったな」

横に座っていた鬼道が周りを眺めそう言った。
オレも鬼道に倣って皆を見回す。

始めは円堂一人の特訓場所だったのに、今や雷門イレブン、キャラバン組、更には選抜メンバーと雷門サッカー部に関わった者にはほとんどに知れ渡っている。

「ここは円堂と同じで皆を引き付ける何かがあるんだろうな」

そう言う鬼道と目が合わせられなくて空に顔を向けた。
目の前の一面群青色の空には月と星が輝いている。

「始めはオレだけだったのにな…」

誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
そのまま瞬く星を眺めていると、脳裏にその時の出来事が蘇ってきた。


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