1号
□イナズマ世界名作劇場
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桃太郎〜starring円堂 守〜
昔々あるところに広志さんと温子さんが住んでいました。
温子さんが川で洗濯をしていると川上から大きなサッカーボールが流れてきました。
驚いた温子さんはそのボールを拾って家に帰ります。
恐る恐る広志さんが割ってみると中から男の赤ちゃんが出てきました。
桃太郎と名付けられた男の子はすくすくと成長し、立派な14歳になりました。
そしてある時村の人々が鬼ヶ島の鬼によって苦しめられている事を知ります。
「勝手な都合で皆を苦しめるなんて許せない…!オレが絶対に倒してオレたちの村を取り戻すんだ!」
正義感の強い桃太郎は鬼を退治しに行くことを決意します。
それを聞いた温子さんは桃太郎のためにきびだんごをこさえました。
「桃太郎、これを持っていきな。どうせあんたは鬼ヶ島に行くって事に熱中してご飯も食べないだろうからね。ついでにそれを使って仲間でも集めなさい」
「おおっ!母ちゃんサンキュー!」
桃太郎は満面の笑みできびだんごを受け取りますが、中をちらっと覗いて不満そうな顔をしました。
「母ちゃん、これじゃ全然足りないよ!」
「何文句言ってるの!鬼ヶ島までの道のりなら仲間にあげたって十分持つように作ったんだから!」
温子さんは腕組みをして桃太郎を叱り付けます。
しかし桃太郎も引こうとはしません。
「だってさ、サッカーは11人いなきゃ出来ないんだぜ?これじゃフットサルが限界じゃんか!」
「さ、サッカー?」
桃太郎から帰ってきた言葉に温子さんは眉をしかめます。
「何だよ、仲間集めろって言ったの母ちゃんだぜ?」
「あんたって子は…」
温子さんは頭を抱えました。
桃太郎は村で評判の大の付くサッカーバカだと言う事をすっかり忘れていたのです。
「…分かったよ。すぐに作るからちょっと待ってなさいね」
「あ、どうせだったら100人分作ってくれよ!何かそのぐらい仲間集まりそうな気がするんだよな!」
ニカッと白い歯を見せ眩しく笑う桃太郎。
それを聞いた温子さんの肩がわなわなと震えます。
「あんたは鬼ヶ島に何しに行くつもりなの!」
「へ?鬼退治に決まってるだろ?でも鬼とサッカー出来たらすっげー面白そうだよな!」
「あんたみたいな子に退治される鬼が可哀相だわ…」
怒る気も失せた温子さんは大きなため息をつくと台所に向かっていきました。
おしまい
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