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□第78話の裏側
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−コンコンッ!

今日は珍しく練習が早く終わり、各自自由時間となった。
一人部屋で久遠監督から出された宿題を片付けていたそんな風丸の部屋に、ノックの音が響く。

「誰だ?」

「オレ、だけど」

「緑川?」

驚いて扉を開ける。
そこには扉が開いて少したじろいだ緑川がいた。

「どうしたんだ?私服でいるなんて珍しいな」

風丸は思わず上から下まで見る。
日本代表選抜の選考に現れた時と同じ紫の詰め襟型の上着に暗い黄土色の半ズボンの格好。

全員普段はほとんどユニフォームかジャージで過ごしているので、それ以外の服を見るのは久しぶりで新鮮だった。

「夕飯までの時間暇?予定無いならちょっと付き合ってほしいんだけど」

「暇か、か…」

風丸は今まで自分が座っていた机を見た。
本当はそろそろ溜まってきている宿題をこなしたいが、勉強から逃れられるなら無理矢理にでも暇の理由を作りたい、と言う切実な思いが込み上げる。

「…もちろん暇だよ。どこに付き合えばいいんだ?」

ほんの少しだけ考えて机に積まれているプリントは忘れる事にした。

「市街地に新しいペンギーゴが出来たの知ってる?」

「ああ、木野たちが話してるの聞いたよ。かなり大型の店らしいな」

緑川が無言で頷く。
この辺りには商店街に2ヶ所ペンギーゴがあるが、そのどちらよりも大きく品揃えも一番の店らしい、と秋たちが喋っていた。

「丁度バンテージが切れてるし話の種に行って見ようかなって思って。べ、別に道に迷いそうだからついて来てほしいとか思ってる訳じゃないんだけどさ!」

「…分かった。オレも行きたいと思ってたんだよ」

慌てて手をわたわたと振る緑川に風丸はフッと優しい笑みをこぼす。

「ちょっと待っててくれ。すぐに着替えるから」

そう言って緑川を部屋に入らせ、鞄から真新しい洋服を取り出した。


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