1号
□イライラの原因
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イライラが収まらない。
原因は分かってる。
あいつ、鬼道有人がいるからだ。
「不動!一人で勝手に走るな!きちんと周りを見ろ!」
ほら来た。
従いたくなんてねえけどその通りに相手が動くまで指示を飛ばし続けてウザいから、仕方なく速度を落として味方にパスする。
あいつはいつもそうだ。
今日の朝だって急に近寄ってきたもんだから何かと思えば、久遠監督から預かったって言う紙を出してきた。
ちらっと覗き込むと右上隅にオレの名前とタイムスケジュール、それに練習内容がびっしり書かれていた。
あいつの手から紙を引ったくった瞬間に一瞬眉間にシワが寄ったけど、いつも何の考えてるか分からねえ顔に戻って「不動、個人練習も大事だがサッカーは仲間と協力して初めて最高のプレーが出来るものだ」だなんて言ってきた。
口がひくついたのが自分でも分かった。
他に用が無いならとっとと失せろ、と追い返すと「…分かった。だが監督から与えられたメニューはこなしておけよ?今のおまえに一番合っているプログラムを組んでもらったんだからな」だとよ。
何でこいつはいちいち人の神経を逆なでするような事言うんだよ。
マジでイライラしてきた。
「チッ…!」
今思い出しても腹が立ったからわざとあいつに聞こえるように舌打ちする。
聞いてないのか気にしてないのか分からねえが、あいつは相変わらず相手だろうが味方だろうが指示を飛ばしている。
他のヤツらはあいつの指示に素直に従って動く。
ホント揃いも揃っていい子ちゃんだ。
あいつの指示がなきゃ何にも動けないのか、って監督に言われたのもう忘れたのかよ。
まぁあいつも余計な事まで言うから、言われる方もとばっちりって言えばとばっちりだがな。
その時試合終了を告げるホイッスルが鳴った。
これで午前の練習は終わり、昼休憩となる。
「よし、クールダウンをしながら戻るぞ!」
それぐらい言われなくても皆分かってんだよ。
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