1号

□全員で一つ
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「さーて、今日も張り切って練習するか!」

雷門中のグラウンドに円堂の明るい声が響く。
他のメンバーも次々に正面玄関からグラウンドに集合を始めた。
しかしそんな中、鬼道だけが荷物を持って現れる。

「何で荷物持ってきてるんだ?部屋に置いとかないと邪魔になるだけだぞ?」

円堂が両手を腰に当てて鬼道に問い掛けた。
鬼道は少しため息をついて顔だけこちらに向ける。

「済まないが今日の練習は休ませてもらう。久遠監督には許可をもらっているから」

「ええ!?休ませてもらうって…何でなんだよ!?」

思いもしなかった鬼道の答えに円堂一同驚愕してしまった。

「どうしても父さんの仕事に付き合わなければならないんだ。取引先の社長にオレを紹介したいらしくてな」

「そっか…何か鬼道すっげーな!オレには想像出来ないや!」

「…オレが凄い訳じゃない。それに父さんが紹介したいのはうちには“鬼道有人”と言う跡取りがいると言う事であって、オレはお飾りで呼ばれているだけだ」

そこまで言うと寂しそうに鬼道は笑った。
その表情に円堂は眉を吊り上げる。

「おまえは飾りなんかじゃない!親父さんはおまえだから他の人に紹介したいに決まってるだろ!?だから胸張って行けばいいんだよ!何にも心配する事なんて無いって!」

両拳を握りしめて円堂が叫んだ。
鬼道は顔を上げ円堂を見る。

「オレたちの事なら大丈夫だからさ、安心して父さん孝行して来いよ!」

「…ああ、ありがとう」

さきほどとは打って変わり、優しい笑顔で鞄を背負い直す。
そしてメンバーに見送られ鬼道は校門を後にした。

「よし!じゃあオレたちは練習を始めるか!えっと、とりあえず何から始めればいいんだっけ?」

「まずは準備体操をして、それからランニングだろ?」

中途半端に手を挙げたままの円堂に風丸がそう答えた。
他のメンバーも頷きグラウンドに散らばっていく。

「よし、やるか!」

円堂は大きく伸びをすると皆の輪の中に飛び込んだ。


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