1号
□同じ色、同じ瞳
1ページ/6ページ
「さて、一体どう時間を潰したらいいものか…」
初めて来たのになぜか懐かしい、と皆に言わせた福岡の町並みをオレ−鬼道有人は一人で歩いていた。
エイリア学園の次の襲撃予告を待つために陽花戸中に滞在し、少しでもレベルアップを計ろうとオレたちは奮闘していた。
だが一秒も無駄に出来ないこの状況で、瞳子監督は何を思ったか今日一日練習をするな、と言い出した。
当然メンバーからは練習をすべきだ、と不満の声が漏れた。
しかし監督はそれ以上何も言わずキャラバンに戻って行ってしまった。
円堂は追いかけて問い詰めようと息巻いたがそれに賛同するものはおらず、結局それぞれ夕飯まで時間をサッカー以外で過ごす事になった。
エイリア学園との事で神経を擦り減らしている皆には丁度いい休息日なのかもしれない。
特に円堂は風丸や栗松の相次ぐ離脱でひどく気が滅入っているようだから、少しでも気が紛れればいいと思う。
そう言う訳でオレも特に目的も無く市街地へと繰り出したのだが、少しぶらついて分かった事がある。
オレはサッカー以外の時間の使い方を知らないのだ。
もちろん父さんに言われて習い事はいくつもやってきた。
だが幸か不幸か何度か通ううちに無難にこなせるようになってしまうし、何よりそれに面白さを見出だせなかった。
時を忘れる程熱中出来たのはサッカーしかなく、父さんと影山の期待もあって本当にサッカーしかしてこなかった。
だからオレと同年代の人間がどのように遊んだりするのか全く想像が出来ない。
おそらくテレビやゲームなどと推測するがここには無いし、そもそもそれらで時間が潰せるとは思えない。
「オレも人の事が言えないサッカー馬鹿だな…」
自分で言っておいて思わず笑いがこぼれる。
これ以上いくら考えても無駄だと悟ったオレは、陽花戸中に戻りデータ整理やビデオの編集でもしようと思った。
陽花戸中へ足を向けたその時、後ろから肩を叩かれた。
「だ…」
振り向いた瞬間頬に何かが突き刺さる感触がした。
反射的に目だけ動かすと視界の端に人差し指が見えた。
「あははっ!引っ掛かったー!」
「は…春奈?」
指の主は春奈だった。
春奈はオレを見てけたけたと笑う。
頬を触ると中心が痛い。
どうやら古典的な罠にはまったらしい。