1号
□夜の疾走ネオンランプ
1ページ/6ページ
コンコンッ!
夕食も終わり、久遠監督から課された勉強を嫌々こなしていた時、部屋にノックの音が響いた。
「ん?誰だ?」
「円堂くん、わたしだけど」
「秋?」
驚いて扉を開ける。
秋は部屋の中を覗くなりため息をついた。
「円堂くんの部屋でもないみたいだね…」
「いきなりどうしたんだよ?何かあったのか?」
「実は…」
秋は耳打ちするように話し始めた。
「ええ!?綱海がいなくなった!?」
廊下中に響く円堂の声。
秋は無言で頷く。
「壁山くんがトイレに行こうと思って外に出たら、綱海くんの部屋の扉が開いてて誰もいなかったんだって。始めは綱海くんもトイレだろうって疑わなかったらしいんだけど…」
「他の場所は捜したのか?別の階のトイレとかさ」
「今豪炎寺くんと鬼道くんが捜してくれて…」
その時タイミングを見計らったように秋の携帯が振動する。
「鬼道くん?どうだった?」
『ダメだ。一応春奈に女子の方も見てもらったんだが…』
「そっか…」
残念そうに眉尻を下げる秋。
すると豪炎寺が駆けてきた。
「やっぱりダメ?」
秋の問い掛けに豪炎寺はああ、と短く頷いた。
「どうなってるんだ?まさか黙ってどこかに行ったんじゃ…」
円堂は腕組みをして唸る。
秋も豪炎寺も黙ってしまった。
「…よし、町に捜しに行こう」
「え?」
しばらくした後、円堂が口を開いた。
「校舎内にいないんだったらどこか外にいるって事だろ?だったら捜しに行くしかないじゃないか」
「ちょ、ちょっと待って。それは久遠監督の監視の目をかいくぐって行くって事?」
「そうだけど?」
キョトンとする円堂に秋はため息をつき、豪炎寺は頭を抱える。
「外出禁止令が出た時にあんなに頑張っても阻止されたんだろ?今回も多分お見通しだと思うぞ」
「…でも!何にも言わないまま仲間がいなくなるのはもう嫌なんだよ!」
円堂は眉をしかめ強く拳を握り締める。
「せめて…せめて離れる理由を聞きたいんだ。オレたちの何がいけなかったのか知りたいんだよ…」
そこまで言って寂しそうに顔を伏せた。
秋は次の言葉を探しそうと目を泳がせ、豪炎寺も気まずそう下を向く。
「…皆を集めてくる」
しばらくの沈黙の後、豪炎寺がボソッと呟き階段に向かった。
それを聞いた円堂の顔がみるみる明るくなっていく。
「…ありがとう!オレも下に声かけに行くよ!」
言うが速いか円堂は階段を駆け降りて行った。
.