1号
□氷が溶ける日
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今日も雷門中ではFFIに向けて厳しい特訓が行われていた。
今は円堂と鬼道をキャプテンとした8対8の紅白戦の真っ最中である。
「うおおっ!」
土方が不動にブロックを試みた。
不動はかわそうとしたが足元を掬われ、体が地面と平行になる。
そしてそのままどしゃっと崩れ落ちた。
ボールはタッチラインを越え、審判の冬花がホイッスルを鳴らす。
「すまねえ、大丈夫か?」
崩れたまま動かない不動に、土方や敵ディフェンス陣が駆け寄った。
「てめぇ…!」
助け起こそうとした円堂の手を払いのけ、土方を見上げる。
「不動!」
すると同じチームで反対側に上がっていた鬼道が走って来た。
そして今にも掴み掛かろうとする不動の腕を握って制止する。
「拳を下げろ。わざとやっていない事ぐらいおまえにも分かるだろう?」
「…オレに命令すんじゃねえよ」
「命令じゃない。同じチームとして助言しているだけだ」
「それが命令だって言ってんだよ!」
不動は掴まれた腕を振り払おうと必死で抵抗する。
「まあまあ、落ち着けって」
その時綱海が二人の間に割って入った。
「おまえだってボール奪うために危険なプレイした事あんだろ?それにあのくらいだったら試合中には良くある事じゃねえか」
綱海は笑顔で不動の背中を叩いた。
当然不動は邪魔くさそうに睨みつける。
「ほら、鬼道も腕放してやれよ」
そう言われ、全く納得がいっていない鬼道も渋々引き下がった。
「済まなかった。大丈夫か?怪我とか無ェか?」
土方は本当に心配そうにオロオロと不動の周りを動く。
「チッ…何ともねえよ!」
吐き捨てるように言うと、不動は転がって行ったボールを拾いに向かった。
「ったく愛想がねえヤツだな」
綱海は腰に手をあて不動を目で追う。
「…ありがとう、綱海」
「気にすんなって!こんなの荒れてる海に比べりゃ何倍も扱いやすいぜ?」
綱海は豪快に鬼道の肩を叩くと守備に戻って行った。
じんじん痛む肩をさすりながら、鬼道もペナルティエリア近くに移動した。
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