1号
□中一と小六の論争
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「爆熱…スクリューッ!!!」
ジャパンエリア宿福前のサッカーグラウンドで、少年の気合いの入った叫び声と共に轟音が鳴り響いた。
「しまっ…!」
ダガンッ!と凄まじい音と共にサッカーボールがゴールの右下隅に収まった。
反応するも追いつけなかったゴールキーパーが結構なスピードで地面を滑る。
「…オレの勝ちだな」
シュートをした少年がフッと笑みをこぼす。
ゴールキーパーはボールを拾い、クルッと少年の方を向いた。
「流石豪炎寺!全然追いつけなかったぜ!すっげーシビレるシュートだった!」
満面の笑みでゴールキーパーがそう言った。
豪炎寺と呼ばれた少年は困ったように頬を掻く。
「…円堂だってさっきオレの爆熱ストームを軽々と止めてくれたじゃないか。あれ、かなり渾身のシュートだったんだぞ?」
「へへっ。特訓してるのはおまえだけじゃないって事だよ!」
円堂と呼ばれたゴールキーパーはニヒッと白い歯を見せて笑った。
つられて豪炎寺も口元を緩ませる。
「豪炎寺さん!今のシュート凄くカッコ良かったです!」
「ありがとう、虎丸」
その時、二人の勝負をライン外から見届けていたもう一人の少年が豪炎寺に駆け寄った。
虎丸と呼ばれた少年の、くりっとした暗緑色の目が尊敬の眼差しで見上げられる。
「今日はオレの負けか…。クッソー!ムチャクチャ悔しいぜ!」
円堂がオーバーリアクションで豪炎寺、そして虎丸に近付く。
「いくら円堂さんでもそう簡単に豪炎寺さんのシュートを防げませんよ!」
「虎丸。そんな言い方はするな」
まるで自分の事のように胸を張る虎丸を豪炎寺はぴしゃりと諌めた。
途端虎丸はビクッと肩をすくませ眉尻を下げて、豪炎寺と円堂を交互に見る。
「いいっていいって!豪炎寺がスゲーのはオレも分かってるしさ」
すっかり勢いがなくなってしまった虎丸を慰めるように円堂が優しく肩を叩いた。
何度か肩を叩かれると虎丸に笑顔が戻る。
「3人共ー!夕ご飯の準備が出来たよー!」
その時、宿舎の方からマネージャーの秋の声が聞こえた。
それに反応し3人の顔色が変わる。
「よっしゃあ!飯だ!」
大きくガッツポーズをすると円堂はダッシュで宿舎に向かった。
そのまま食堂に向かおうとする円堂に、秋がここで砂を落としてちゃんと手も洗ってよ?とお小言を言っているのが聞こえる。
「もうそんな時間か。全然気付かなかったな」
「豪炎寺さん、オレたちも早く行きましょう!」
「ああ」
虎丸に急かされ豪炎寺も宿舎に向かって歩きだす。
勿論同じ轍を踏まないように、秋に言われる前に服の汚れを払いながら洗面所に直行した。
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