小説

□血に染まった優しい男
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今日も平和な尸魂界

とは言うものの
反逆者の事を除けばだ

何時も変わらぬ空と雲


あの人が消えただけで 
音も光も色さえ消えた

俺の世界 

貴方が居ないだけで 
息苦しささえ感じる

首を締め付けられている
感覚が止まない




俺の希望は貴方だった

貴方さえ側に居てくれたら

例え世界が滅びても
幸せを感じていられた












“……檜佐木”






不意に呼ばれた気がした
頭では有り得ないと 
理解していたのに
聞こえぬ声に顔を上げる

やはり、望む姿はない




「……全てが夢なら」



どれほど気が楽だろう

全てが幻で 
目が覚めれば
何時もの優しい顔で
貴方が笑う



“嫌な夢でも見たか?”と


夢な訳ない 

幻な訳ない


あぁ、分かってる


なのに夢だと思いたい
その願いが消えない














ある日の朝
俺に現世行きの命が出た

何かが動きだしたらしい



そう、闇が終焉へ
動きだしたのだ












現世行きの命が出た
次の日には現世に
到着していた

空に月が輝く夜だった



「久々だな…現世も」



出来るだけ霊圧を消して
辺りを捜索する

今回の命は 
現世での不審点及び 
敵の情報収集又は捕獲だ

さっさと終わらそうと 
大通りを歩いていれば



十人くらいだろうか
道に人間が倒れていた
あからさまに可笑しい

一人や二人なら 
貧血や等の理由で
納得できるが
流石に二桁になると 
不自然だった

そっと首に触れてみれば 
まだ、息がある
まるで眠っているようだ





「たっ、助けてくれ!!」

「いっ、命だけは!!」



近くの裏路地から
命乞いのような言葉が 
聞こえた





「……野暮は止せ…醜く見えるぞ」







“ザシュッッ”

“バキィッッ”

“ブシュッッ”









裏路地で無残に響く

殺人の音

止めどなく流れだす赤

そして、聞き覚えのある声













忘れる訳無い

忘れられる訳が無い










信じたくなかった

信じられなかった






響いたあの声が

待ち望んでいた








あの人の声だなんて














“ザッ…ザッ…”





近づく足音
咄嗟に建物の影に身を潜め様子を伺う


霊圧に鋭いあの人に 
バレないように
自分の限界まで
霊圧を押さえて









「良かった…
息はあるな…」



俺が望んでいた声の主は
倒れている人間に触れ
誰一人として
命を落としていない事に 
安心した声で呟いた 

裏切りを確信させる
その白い装束は
先程、斬ったであろう
死神の血で 
赤黒く染まっていた





そういえば 
昔からあの人は 
戦いに人間を巻き込む事を嫌っていた


だから戦いが始まる前に始解しその超音波で
気絶させながら戦っていた


変わらない…


反逆者になっても
貴方は変わっていない

確かに考え方は
変わったかもしれない
護廷十三隊や尸魂界とは 
相容れないかも知れない 




でも根は変わっていない









ならば

血に染まった
優しい男《貴方》を

必ず取り戻してみせます




例え時間が掛かっても
俺は諦めない

















俺の光は 
貴方だけなのだから

―End―

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