マリオ短編
□紅茶とジャム(ディメルイ)
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紅茶とジャム
「う〜ん、ルイルイくんの淹れてくれた紅茶はおいしいね〜♪」
いつもの調子でディメーンが言った。
彼の手には、緑色のティーカップが握られている。
「そうかな?急いで淹れたからあんまり自信ないけど・・・」
傍らには、小さなティーポッドを手にしたルイージ。
彼も自分の分を注ぐと、カップを口に運んだ。
「ちょっと、渋いかも」
一口含み、ルイージは顔をしかめる。
「僕はおいしいと思うけどね〜?」
紅茶の渋さなどまったく気にしない様子で、
ディメーンは再びカップに口をつける。
ごく、と音がして、彼の喉仏が動く。
「ふう・・」
かちゃん、と音を立て、空になったカップを置く。
ディメーンはいまだに変な顔をしているルイージに向き直った。
「そんなに渋いと感じるなら」
そういって、ルイージの手に握られていたカップを取った。
「こうすればいいよ」
次に彼がとった行動は、ルイージを驚かせた。
紅茶と一緒に出されたケーキのトッピング、イチゴジャム。
それをティースプーンで少し掬い、カップに落とした。
「え、ちょ、何を」
戸惑うルイージをよそに、ディメーンはカップの中の紅茶とジャムをかき混ぜる。
「はい、これを飲んでみて」
カップを手渡すディメーン。
紅茶はジャムと混ざり、少しだけ赤みが増していた。
「まあだまされたと思って、飲んでみてよ」
そういわれると断れず、ルイージは渋々紅茶を飲む。
しかし、ルイージを待っていたものは予想に反していた。
「・・・・おいしい」
紅茶の渋さがジャムの味によって目立たなくなり、
なおかつ、苺の甘みと風味で紅茶本来のおいしさが引き立てられている。
「んっふっふ・・。ね、おいしいでしょ?」
隣で笑うディメーン。
ルイージは、ゆっくりと頷いた。
と、ルイージの中にある疑問が浮かぶ。
「これ、誰に教えてもらったの?」
そうたずねると、ディメーンは一瞬だけ表情を失い。
またすぐに、元の笑顔に戻る。
彼は、指を一本唇に当てて
「内緒♪」
とだけ答えた。
静かな昼下がり。
紅茶とジャムの香りが漂う、おはなし。