記念・企画Novel

□【がーるずとーく】
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授業の合間にある10分休憩。

少し長めの昼休み。

放課後のファミレス。

帰り道。

たまの休日、誰かの家で朝から晩まで。


年頃の女の子が数人集まれば、お喋りは大概盛り上がる。





がーるとーく





「やっぱり性格!優しい人がイイな!あと凛々しい人っ」



そう話すのは桃井さつき。

ここは彼女の自宅。彼女の部屋。
今日は丸一日休みの日曜日。

そしてここに集まるのは、彼女と同じく帝光中学校に通う友人達。
黒子、黄瀬、緑間…部屋の主である桃井を含めた4人。


誰が言い出したかは忘れたが(まぁ、黄瀬か桃井かのどちらかだろうが…)『久しぶりに皆で遊ぼ!』という話になり、当初は何処かへ出掛ける予定だった。
それが何故、彼女達が室内に集まっているのかと言えば…残念ながら本日の天気が雨だからだ。
それも、バケツをひっくり返したような激しい降り様。
傘を差していても間違いなくびしょ濡れになってしまうだろう。

雨の激しく降る光景と、濡れるだろうという予想から『残念ですけど…今日は中止にしましょうか』と、黒子から一斉送信されたメールを受信したのが朝。
それに『仕方ないのだよ』と賛成したのは緑間、反論したのが黄瀬と桃井である。

…彼女達のメールのやり取りを少し御覧頂こう。


『折角久しぶりの休みなんスから皆と遊びたいっスよー!!』
『そうよ!家でお茶でもしながら色々喋りましょうよ!!』
『おバカ共め。こんな雨の中外へ出てみろ…傘など何の役にも立たないのだよ』
『ボクもそう思います』
『だってオレ今日すっげー楽しみにしてたんスよ!?てるてる坊主だってちゃんと吊してジンジを尽くしたのに…緑間っちの嘘つきーッ!』
『オレの所為ではない。お前の尽くし方が足りなかっただけなのだよ』
『うわーんっ!緑間っちがイジメるー!!(´;ω;`)』
『…二人とも、メールの一斉送信でケンカしないで下さい』
『もうミドリン!あんま涼ちゃんイジメちゃダメ!大体、ミドリンだって人事尽くすのサボったんじゃないのー?』
『何を言う!オレだってちゃんと照る照る坊主を作ったのだよ!!』
『…何だかんだ言ってミドリンも楽しみだったんじゃん!ねぇ、涼ちゃん?』
『そーっスよ!ねぇ、お願い緑間っち!黒子っちも!!』


こうして…どうしても諦めない二人に折れ、溜息をつきつつも黒子と緑間は“お茶会”を了承したのだった。
そして全員の家の中間地点辺りである桃井の家に集合しているのだ。

年頃の女子が集まれば大体の場合、自然と話の内容は、ガールズトークと呼ばれる“恋愛話”になる。

現在の議題は《好みのタイプ・彼氏にするならの条件》

ここでやっと冒頭の桃井の台詞に戻る。


「やっぱ性格は重要っスよね〜。あと、男前な性格で、顔も…ちょっとは整ってる人がイイっス!」
「そんなパーフェクトマン滅多に居ないわよー」
「大体は『性格が良ければ不細工・顔が良ければ性格が最悪』のどちらかだな」
「むー…黒子っちは?黒子っちはどんな人がイイ?」
「ボクは………経済力のある人がイイです」
「経済力ー!?え、黒子っちの条件お金なんスか!?」
「お金は大切ですよ」
「うむ。この不景気だからな…金はあるに越した事はないのだよ」
「玉の輿とか憧れますよね」
「そうだな」
「現実的過ぎっスよ!あ、じゃあさ『お金はあるけど不細工な人』と『貧乏だけどイケメンな人』結婚するならどっちがイイっスか!?」
「「『お金はあるけど不細工な人』」」
「即答!?」


黄瀬の“これならどうだ!”という、取って置きの質問も黒子と緑間には通用しなかった。
二人共見事に経済力により生み出される財力を選んだ。


「そもそも、イケメンなのに貧乏というのが理解できん。イケメンならばその無駄に整った顔を利用してホストにでもなれば良いだろう。働こうという意思が感じられんのだよ」
「ホストか〜…儲かりそう!」
「桃っちまで!?んもー、みんなシビアっスよ!!」
「でも黄瀬君、考えてもみて下さい。お金があれば、多少顔が崩れていても直す事が可能なんですよ」
「まさかの整形!?いくらなんでもそんなのヒド過ぎっスよ黒子っち!好きな人なら多少ブサイクでも受け止めてあげるのが愛っスよ!!」
「先にイケメン云々言い出したのはお前なのだよ」

頭が良くてスポーツ万能、眉目秀麗でお金持ちで優しくて男前。
そんな気持ち悪いくらいにパーフェクト過ぎる男はこの世に居ないだろう。
黄瀬の理想に関しては『諦めろ』としか言えない。
だからといって黒子と緑間の理想が果たして現実的かどうか問われれば…どうだろうか?
間違った事は言っていない気もするが、言い方がキツ過ぎて何とも言えない。

「黄瀬君、不細工か否かは顔で判断するものじゃないです。信念を持ち、志が不細工でなければそれで良いんです」
「何でさりげにちょっとイイ話にしてんすか!〜〜っもう次!次の議題いくっス!!」


議題.2《電話やメールはマメにして欲しい?》


「涼ちゃんはして欲しそうだよね」
「ずぅえーーーったいにして欲しいっス!」
「何故だ?」
「『何故』!?ちょ、緑間っちの“何故”にオレは何故っスよ!」

桃井が容れてくれたミルクティーを飲みながら言葉をぶつける黄瀬。
だが、ぶつけられた側の緑間は頭に疑問符を浮かべている。

「フツー毎日でもして欲しいって思うもんスよ!?」
「毎日だと?鬱陶しい以外の何物でもないのだよ。何を毎日メールする事がある」
「内容なんて何でもイイんスよ!『今何してる〜?』とか『今日こんな事あった』とか『ヒマ〜』とか」
「…ですが『暇』と言われても、ボクは暇じゃないかもしれませんよね。自分の状況を押し付けるのは感心しません」
「さっすがテッちゃん!良い事言う〜」
「あれ、オレまた一人ぼっち!?」

又してもonly-lonely-Answerな黄瀬は涙目。
流石に可哀相と思ったのか、桃井が助け舟を出してやる。

「まぁ、毎日は私も鬱陶しいかな〜って思うけど…確かに小マメには連絡して欲しいかな」
「やっぱそっスよね!桃っちなら解ってくれるって信じてたっス!!」

桃井に飛び着き、ギュウッと抱きしめる黄瀬。
なんと単純な子だろうか。
こんな彼女でも社会に出てモデル業に就いているのだから世の中不思議だ。

芸能界やファンの変な男に騙されやしないか…緑間と黒子は内心心配で仕方がなかった。

「分かったスか緑間っち黒子っち!メールや電話は、言わば愛情表現なんスよ!」
「毎日されても重いだけなのだよ。足枷にしかならん」
「……グスン…冷めてる。…緑間っち冷め過ぎっスよ。ドライを通り越してコールドっス…ッ」
「緑間君らしいと言えば“らしい”ですけどね」
「大丈夫!何だかんだ言ってミドリンみたいな子の方が、メール来なかったら来なかったで寂しがっちゃうもんよ」
「あー、緑間っちツンデレっスもんね〜」
「適当な事を言うな!!」
「もしかしてアレですか?ちまちまとメールや電話をするくらいなら会いに来いと…そういう事ですか?」
「キャー!そうなのミドリン?じゃあ遠距離は難しいかもね〜」
「簡単に会える距離じゃありませんからね」
「おい!オレを置いて勝手に話を進めるな…ッ」
「もーっ!緑間っち可愛いー!!」

そう叫んで、次は緑間に抱き着く黄瀬。
先程まで冷たいだの何だの言っていたクセに、緑間本人の言葉ではなく、あくまで黒子による想像話を真に受ける黄瀬の頭の軽さに、緑間は溜息をつかずにはいられなかった。

「ええいっ、離せアンポンタン!この話は終わりだ!次の議題は何だっ!」


議題.3《束縛、嫉妬はして欲しい?》


「あんまりされ過ぎると嫌だけど…適度にならされたいかな」
「あんまり無関心だったり、ほったらかしにされてたら愛されてない気がして不安っスよね…」
「………はぁ」
「そういうものか?」

又もや『?』を浮かべる緑間。そして黒子。
この二人と黄瀬では恋愛観が全く違うらしい。
この中では桃井が一番中立的らしい。

「まーた黒子っちと緑間っちは!」
「そう言われましても…“適度な嫉妬”ってどのくらいですか?」
「例えば…出掛ける時に『誰と?』とか『何時頃帰る』とかメールの相手気にしたりとか…」
「母親か」
「そーいうもんなんス!」
「それで出掛けるメンバーに男性が居たら嫌な顔されるんですか?面倒臭いです」
「でも、あんまりにも無反応だったり、自由にされ過ぎてたら『オレの事心配じゃないのかな?』って思わないっスか?」
「『心配』ってどういう意味ですか?」
「一般的にありそうなのだと『浮気』とか『襲われないか』とかかな?」

熱く語る黄瀬とは裏腹に、呑気にクッキーをサクサクいわせながら黒子の質問に答える桃井。
そして、紅茶を啜りながら彼女達(主に黄瀬)の論を一刀両断にするのはいつもの彼女だ。

「バカバカしい…友達付き合いにまで口出ししてくるとは一体何様だ。ウダウダと言われるのはキライなのだよ」
「ボクもです」
「“お前はオレの何なのだよ”という気分だ。忌ま忌ましい」
「“何”って彼氏っスよ!!」
「だから何だ?彼氏だろうが何だろうが他人は他人。オレのテリトリーはオレの物だ。誰にも入り込んで欲しくないのだよ」
「そりゃあ…そーかもっスけど少しくらいは…っ」
「構ってくれるのと、プライベートに入り込んでくるのと、ベタベタするのは違うんですよ、黄瀬君」
「う゛っ…桃っちぃ〜」

口で緑間と黒子に勝てるワケがない。
なのに噛み付きにいく黄瀬は学習能力がないのか、チャレンジャーなのか…。
いや、単に自分の主張を聞いてもらいたいだけだろう。

「ん〜…じゃあ、例えばの話ね。二人に付き合ってる人が居るとします」

何やら例え話をしだす桃井と、コクリと首を縦に振る黒子と緑間。
黄瀬は桃井にへばり付きながら大人しく話を聞いている。

「その彼氏さんとスッゴく仲の良い女の子がいます。女の子は彼女…テッちゃんやミドリンの事ね、…の存在は当然知ってるし、彼氏さんに恋愛感情は一切抱いていません。彼氏さんの方もその子に特別な感情は全く持っていません。そんな二人が、二人っきりで遊園地に行く事になりました。テッちゃんやミドリンはどうする?」
「どうすると言われてもな…」
「二人で遊園地に行く事なんてあるんですか?」
「たーとーえーばーっ!!」

桃井の問い掛けに対して二人はうーん…と考える。
黄瀬は桃井の腕を掴んでブンブンと揺すりながら、『オレは絶対イヤっス!そんなの耐えらんないっス!!』と喚いている。

そんな彼女の喧しい声をBGMに、二人の出した答えは…………




「別に構わないのだよ。友達なのだろう?」
「別に良いんじゃないですか?友達なんでしょう?」




予想はしていた。
だが、やっぱりか…と黄瀬は項垂れる。

「……………黒子っちや緑間っちの彼氏になる人は大変っスね…」
「まっ、出来たら出来たで変わるよ(この二人は特に…)」
「そっスよね!女の子っスもんね!(特に二人は彼氏の存在で変わりそうっス…)」


恋愛なんて十人十色。
考え方、好みのタイプ、付き合う条件、想いの伝え方、愛情表現、喧嘩の理由…そんなの人それぞれで良い。
そうでなくちゃ面白くない。

いつか自分達に恋人が出来た時、惚気たり愚痴ったり………


(早くしたいな…そーゆーの。

超楽しみっス…)


黄瀬がひっそり思っていると『あ、』と、黒子から声が上がった。

「どうしたの?テッちゃん」
「彼氏の絶対条件…一番大切なのを忘れてました」
「…なんだ?」



「『バスケが好きな人』です」



黒子の言葉に黄瀬も桃井も緑間もキョトン顔。
そして全員、唇が弧を描き頬と目許を緩ませる。


「初めて皆の意見が合ったっスね!」


黄瀬が嬉しそうに言い、黒子に抱き着いた。





(あ、そうだ!なんなら今から青峰君でも呼ぶ?)
(わぁ〜!青峰っちハーレムっスね!!)
(…ここにか?)
(それは…流石に可哀相な気がします)






―fin―


青峰は今頃きっとクシャミをしています(笑)


2010.6.17.木




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