記念・企画Novel

□+木リコ+
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今日は日曜日。
だけどただの日曜日じゃない。

一年に一回。
クリスマスとはまた別に甘い雰囲気と匂いを醸し出す季節。


バレンタイン。


でもそんなものバスケ部に関係ないわ!!


と、いうわけで。
いつも通りに激しい練習メニューを今日も今日とて皆ヘトヘトになりながら何とか熟した。


ピーーッ!!


「集合ー!!」

私がホイッスルを鳴らし集合を掛けると全員集まり輪になって立つ。


「それじゃあ今日の練習はここまで!!みんなお疲れさま!!」
「「「お疲れ様っした!!!」」」



号令をかけ挨拶を終えれば、掃除をする人、部室に向かう人…みんな散り散りになる。

その前に…


「ちょい待ちっ」


私がそう言えば皆がピタッと動きを止め、こちらを向く。


「どーしたカントク。何かあんのか?」

日向くんが代表して聞いてくる。
勿論あるわよ!!


「今日はバレンタインでしょ!!日頃からボールばっかり追っ掛けて青春はそれだけのアンタ達に私が恵を持ってきてあげたわ!!」
「「「「!!!!!」」」」


冒頭じゃああ言ったけど、やっぱりイベント事には便乗しなくっちゃ!!
皆今日も頑張ったし、“疲れてる時は甘いもの”って言うしね!

だけど皆は声にならない叫びをあげる。
何よその失礼な態度は。


「か、カントク…それは間違ってもて、てててててててて手作りじゃ…」
「ちょっと小金井くん?“間違っても”って何よ!!?」
「い、いえっ、なんでもありませんっ!!!!」


まったく…失礼しちゃうわっ!
私だって自分が料理そんなに…そ・ん・な・に!得意じゃない事くらい分かってるわよ!!


「…安心なさい、チロ●チョコのバラエティーパック超お得用買ってきただけだから」
「「「オォー!!!」」」


途端にちょっとした歓声が響く。
……何なのよ、もうっ!


「ほらほらっ!一人3つずつぐらい取って、ちゃっちゃか片付けて帰るわよ!!体育館閉められるから」
「「「ハイッ」」」


チョコを取って、一言私に『ありがとう』とかの御礼を言って各々の作業に戻っていく。


「はい、鉄平も」
「おぉ、サンキュー」


そして最後に鉄平に渡して、チョコ配りは終了。
袋の中に一つだけ端数で余ってしまったそれのフィルムを剥き、自分の口に放り込むと、疲れた脳と体に心地好い甘さが拡がった。





学校を出て、僅か10分の道程を待っててくれた鉄平と帰る。

家と学校が近いって便利だけど……なんかちょっと寂しいような、物足りないような…。



(何でかしら……?)



そんな事を考えていると鉄平から思いもよらない事を言われた。


「なぁ、リコ。今からお前ん家行っていいか?」
「は!?な、何でよ?」
「いや、チョコ…バレンタインだぜ?長い付き合いの幼なじみにアレはねーって…!」


どうやら部活終わりに皆にばら撒いたチロ●が気に入らないらしい。


「一応チョコは食べたんだから別にいいじゃない」
「だってあんだけじゃ足んねぇし」
「自分で買えば?」
「オマッ!この時期、男がどんだけチョコ買いづらいか知ってんのか!!」


何を力説してんのかしら


本当は『知るかっ』て突っぱねてもよかったんだけど……仕方ないわねぇ


「……はぁ、分かったわよ。大したものは出来ないからね!!」
「!おうっ」


そこはやっぱり腐れ縁…ちょっとくらいいっか…と思って、嬉しそうに笑う鉄平を家に上げた。



鉄平には部屋で待ってもらい、私はキッチンへ。

だけどチョコなんて作る予定なかったし、本当に何もない。
あるとすれば――……




◇◇◇




「お待たせ」
「……………………………。おー、リコが料理を…」
「…アンタ馬鹿にしてんの?このくらい私にだって作れるわよっ」
「まぁ、料理って呼べるかどーかは微妙だけどな」
「そう…馬鹿にしてるんじゃなくって喧嘩売ってんのね?」


私が作ってきたのはホットチョコレート。
板チョコを溶かして牛乳と混ぜた簡単なもの。

料理と呼べない事は百も承知している。

それでも人に言われるとムカつくからボキボキッ…と手の指の骨を鳴らす。


「じょ、冗談だってジョーダンッ!!そんな骨鳴らすなって!!」
「やらせてんのはどこの誰よ!!」
「まーまー。指の骨鳴らすと太くなんぞ?…せっかく綺麗な手してんだから」
「なっ!」


こ、こいつサラッと恥ずかしい事を…!!
って、何で私が鉄平相手に照れなきゃなんないのよっ!!
冷静よリコっ!
平常心よ、リコっ!!


「なぁ、飲んでいいか?」
「ドーゾ!あっ、言っとくけど義理なんだからね!義理も義理っド義理中のド義理よっ!!」
「はははっ十分だよ。…サンキュ」
「……ふんっ」
「んじゃあ、イタダキマース」


ズズっ…


カップに口をつけ、鉄平がホットチョコを飲んでいく。
さっき鉄平が言った通り、ただ単にチョコを溶かして混ぜただけ。
失敗しようがない。
…普通に美味しいはず。



「ぷはぁ…!うん、美味いよリコ!!」
「それはどーも。お粗末サマ!」


分かってはいる。
だけどどうにもつっけんどんに返答してしまう。
特に鉄平は幼なじみだし、気心が知れてる分余計に…。



「リコ」



飲み終わったのか、カップをテーブルに置きながら鉄平が私の名前を呼ぶ。


「…なによ」
「ホワイトデー…何がいいか考えとけよ?」



え……?



「…なんでよ。別にこんなのバレンタインの内に入んないし」
「でも、チョコはチョコだろ?」
「……ホワイトデーだって部活よ」
「今日だってそうだったろ?部活終わりから“どっか連れてけ”ってのでもいいし、“お菓子くれ”とかでもいいからさ。…普段頑張ってくれてっからお返ししたいんだよ」
「!」



あーもーっ!!
なんだって鉄平はいつもこう…!!



「っ………か、考えとく」
「よしっ、決まりな!……ん?どうした、リコ?こっちむけよ」
「やーよっ」
「…リーコー?」
「…るっさい!いいから見るなぁ!!」





  真っ赤な顔

     色付く気持ち





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



念願の木リコが書けて満足です^^

男勝りなリコちゃんは恋とかに照れてりゃいい(笑)



2010.2.14.日




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