記念・企画Novel

□◇黒♀黄◇
1ページ/1ページ





*二人とも20歳くらい。









今日は大好きなあの人が生まれた日―…





「黒子っち!!」


今日は黒子っちとデートなんス!!
何を着て行こうか、とか髪型はどうしようかとか悩んでいたら家を出なくちゃいけない時間を過ぎていて…走って待ち合わせ場所へ行けば、やはりというか、既に黒子っちが待っていた。


「おはようございます、黄瀬くん」
「はよっス!!ごめんね…待たせちゃって」
「いえ、ボクも来たばかりなので大丈夫ですよ」


うそ。
黒子っちはいつも待ち合わせの10分前には居る。
オレに気をつかわせない為の。
そんな小さなうそが優しくてカッコよくって…どんどん好きになっちゃう!!


「じゃあ行きましょうか」
「はいっス!」


行き先はこの間撮影で使った待ち合わせ場所から近くのカフェ。
実際食べて、自分も美味しいと思ったし、何より甘いものが好きな彼に喜んでもらおうと選んだ。


「着いたっ!ここっスよ!!」
「素敵なお店ですね。さすが黄瀬くんです」
「えへへ〜」


黒子っちに褒められた!!
それだけで凄く嬉しい。

「でも、お客さんいませんね」
「あ、それは貸し切りにしてもらったからっス!!」
「え…?」


……自分で言うのもなんだけど、オレは結構人気のあるモデルだ。
だから見つかれば騒ぎになる(今だって可愛さは意識しつつ変装だって忘れていない)
折角の二人っきりのデート…絶っっっ対に邪魔されたくない!!
だからお店の人に無理を言って今日は貸し切りにしてもらったのだ。


「そんな…わざわざ。大変だったんじゃ…」
「せっかくの誕生日なんだから気にしないで!…ほら入ろっ」

遠慮している黒子っちの背中を押して店内へ。


「どれも美味しそうですね」

普段無表情な彼。
今だって、彼を全然知らない人や付き合いの浅い人が見たら変化はないように見えるだろうけど、オレには分かる。


(嬉しそう…)


喜んでもらえてる。
黒子っちが嬉しそうだとオレもとても嬉しい―…


「さっ!食べよー!!二つくらいイけるかな♪」
「そうですね。…でも黄瀬くんはあまり食べると太っちゃうんじゃないですか?」
「むーっ!!黒子っちのイジワルッ!いいっスもん…ちゃんとダイエットするから」
「冗談ですよ」


クスクス笑う黒子っち。
どうしよう、ドキドキが止まらない。







注文したケーキを食べ、ながら色んな話をする。
…そろそろ切り出してもいいかな?

「あ、あのね黒子っち!」
「はい、何ですか?」


食べる手を止め、こちらを見てくる黒子っち。

「お誕生日おめでとっ!!プレゼント用意したんスけど…」
「え、ここを貸し切りにしてくれた事じゃないんですか?」
「違うっスよ!…あんね、前『谷崎潤一郎の作品集』欲しいって言ってたじゃないスか…」
「え、えぇ…まさか…」
「えへっ、買って黒子っちの家に送っといたっスよ!!」
「…あ、ありがとうございますっ」
「へへっ…」


よかった。
内心「ボクなんかの為に大枚叩いて!!!」って怒られるかとヒヤヒヤした。

彼の柔らかい笑顔を見られてホッと安心する。







「黄瀬くん、今日はありがとうございました。本まで頂いて…」
「本はまだ渡せてないけどね〜、どういたしまして!!」
「…それで、ですね。もう一つ…欲しいものがあるんですけど…」
「え、なんスか?」
「……。」


オレが問うと、黒子っちは無言のまま小さなビロードの箱を取り出し、蓋を開いた。


「え…コレ…」
「…受け取ってくれますか?」
「へ、えっぁ…な、んで?オレ、今日誕生日じゃなっ!」
「知ってます。ボクの誕生日ですよね」
「そ、そうだよっ?黒子っちの誕生日なのにっ何でオレが、ゆ、指輪…」


言わずもがな
箱の中身は高そうな指輪
石はダイヤモンド
所謂“給料三ヶ月分”…


「…不安、なんです」
「ぇ…?」
「君の想いを疑ってるわけじゃありません。でも、君は人気モデルですし、色んな方との撮影もあるし付き合いもある。その度に嫉妬に狂いそうになる。…だけど君からモデルという職業を奪いたくはない」
「……。」
「だから、目に見えて…君を繋ぎ止めておく形が欲しいんです。ボクに…君の隣に立つ権利を…君を、頂けますか?」
「…!!」


知らなかった。
黒子っちがそんな風に思っていたなんて…。
そんな風に思ってくれていたなんて……。


「…オレでいいんすか?」
「黄瀬涼太だからいいんです」
「っ黒子っちぃ!!」


ガタンっ…と思わずイスを倒して黒子っちに思いきり抱き着きにいく。
あまりの勢いに黒子っちもイスから落ちちゃったけど、それでもオレをしっかりと抱き留めてくれた。


「オ、レっも…黒子っち、が、いいっ!黒子っちじゃ、なきゃ…ヤダッ!!」
「…ありがとう、ございます」
「ふぇっ…ぅく」
「黄瀬くん、泣かないでください……嵌めてもいいですか?」


“何を?”なんて聞かなくても分かる。
オレが左手を差し出すと、黒子っちの左手が優しい手つきで掴む。

そして…

薬指に輝る“形”が嵌められた。




愛が生まれる日




〜終〜


2010.1.31.日



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ