記念・企画Novel

□◇青黒◇
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君はいつでも唐突なんです。




「テツー、今から心理テスト出すから答えろよ?」
「…はい?」





高鳴る鼓動がプレゼント





一週間前の夜、青峰君から
『来週の日曜空けとけ。』
とメールがきたとき、ボクは自分の誕生日だとすぐに気が付いた。
別に期待していたわけじゃないですけど…(ウソ、少し期待していました)…やはり、恋人である彼がそう言って予定を考えてくれているのが嬉しかった。
特に、青峰君みたいにイベント事に疎そうな…というか興味なさそうな人からだと尚更。


誕生日前日…昨日の夜に、また青峰君からのメール。

『明日、13時に家に来い。』

の一言だけが送られてきた。
別に0時丁度の誕生日メールなんて何とも思ってませんでしたけど…「もうちょっと何かないのか」と思いながら『わかりました。』とだけ返しておいた。(ちなみに黄瀬君と桃井さんは0時に、緑間君は今朝方メールをくれました。)

そして“来週の日曜”つまり今日、1月31日―ボクの誕生日―を迎え、約束の時間通り、彼の自宅へ来たわけなんですが…。


「なんなんですか急に…」
「だーかーらー、心理テストだって」
「…なんのために、ですか?」
「んぁー?ちょっとした実験だよ、実験」
「?」
「いーから!答えるだけなんだからイイだろ?…ってか拒否権ねーけど」
「…誕生日なのに相変わらず横暴ですね。まぁ、構いませんけど……どうぞ?」
「んじゃあ、いくぞ…

『「なんか自分の生活って物足りない!」たまの休日をいたずらに過ごしてしまうと、ついついこんなことをおもってしまうもの。あなただったら、新たに何を始めてみたい?』

(A)ダンスレッスンに通う
(B)陶芸や書道などの習い事
(C)家のインテリアにこだわる
(D)資格取得に励む


…さぁ、どれだ?」
「悩みますね…」
「んなもん直感で選んじまえよ」
「えっと…じゃあ、本の整理とか色々としたいので(C)で」
「(C)な。えーっと…

『このテストは、あなたがこれからの人生で大切にしていくものがわかります。

(C)家族を大事にし、子育てを楽しむ。家は「家族」のシンボル、これを選んだあなたの気持ちは、家族へと向かっています。家族を守り、世話をし、育てることに大変興味があるあなたは、自分の子供を大切にすることでしょう。』


はーん…。」
「なるほど…。で、これが何なんですか?」
「…気に入らねー」
「……は?」
「お前なら(B)選ぶと思ってたのに」
「(B)…ですか?」
「『(B)精神が安定する心のパートナー。集中力や精神力を鍛えたいという欲求を持つあなたは、精神的な安定を人生に求めています。この先の人生、自分を支えてくれる心のパートナーを大切にすることで、毎日も充実することでしょう』」
「…つまりその“精神的パートナー”は自分だ、と?」
「あ?ったりめーだろ?オレ以外にお前支えられる奴いんのかよ?」
「……。」



なんていう横暴な。
でも…なんて彼らしい…



「それは、プロポーズですか?」
「…そーとっても構わねぇけど?」


そうぶっきらぼうに言い放つ。
でもそれは照れてる証拠……図体に似合わず可愛い人です。


「じゃあ結局、(C)の“家族を大事に”でも間違いじゃないですね」
「ありゃ子供重視だから駄目だ。気に入らねー」
「あぁ、それなら問題ないですよ。
君ほど手の掛かる大きな子供もいませんから…。」
「…どーゆー意味だ、コラ」
「そのままです」
「へー…んじゃあオトナなテツはケーキとかいらねんだな?」
「!…ケーキ、ですか?」
「おぅ」

青峰君はおもむろに立ち上がり部屋を出ていくと、1分もしない内に戻ってきた。
白い箱を持って…。


「開けてみろよ」


促されるまま、白い箱―話の流れ的にケーキの箱―を開ける。

「!こ、このケーキ…!!」

こ、これは『La・cotte』の数量限定ロールケーキ!!
毎日10本しか販売されなくて、開店僅か30分でなくなるという幻の…!!

「な、何で青峰君がこれを…」
「朝、買ってきた」
「……ボクのために、ですか?」
「…それ以外に何があるっつーんだよ」
「……。」


このケーキは本当に人気で…。
開店前に並んでいたとしても、必ずしも手に入るわけではない。
開店1時間前にはもう人が並んでいるから。
つまり青峰君はそれより早くから並んで居たという事。
やっぱりケーキ屋さんだからか、女性客が殆どのこの店に…。
影が薄いボクでも並ぶのが少し恥ずかしいこの店に…。


…青峰君が。



一体どんな顔をして並んでいたのか?

そう考えると失礼ながらちょっとおかしかった。

「…なに笑ってんだよ?」
「いえ、何でもありません。……ありがとうございます。とっても、嬉しいです」
「…ぉぅ」
「ケーキ…頂いてもいいですか?」
「あぁ。……テツ」
「はい?」

「誕生日、おめでと」


やっぱりぶっきらぼうな言い方。
だけど、それが君らしくて…


「ありがとうございます」



好きですよ。


あ、心理テストの結果ですけど、やっぱりボクは(C)で合ってると思います。
だって、彼と居たら…


ドキドキして
安定なんてしないんですもの―…





〜終〜


2010.1.31.日


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