記念・企画Novel

□【ケーキより甘く】
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本日はクリスマスである。



だが、受験生である今吉にそんなものは関係なく、何でもないイベントである。今だって、家族が“クリスマスだから”と出かけているというのに、自分は留守番も兼ねて勉強三昧だ。


確かに、恋人である桜井と一緒に居たい・イチャイチャしたい・あわよくばニャンニャンな事もしたいと思わなくはない。
というより、正直思いまくりである。
だが、出来ないものは出来ない。
…仕方ないのだ。


桜井には事前に「申し訳ないがクリスマスは一緒に居られない」と伝えてあるが、その時に見えた残念そうな…寂しそうな顔が今でも思い出される。

「ハァーア…桜井、どないしとるやろ……」

友達とかバスケ部員の誰かとでも一緒にいるのだろうか?

青峰や若松らと…



「(…なんやオモンナイなぁ)」



恋人の自分は会えないのに、ただの友達や先輩が会えるなんて…。
そんな事を考えていたらムシャクシャしてきた。



「(アカンアカン!問題集に集中しやな!!)」



そう考え直し、再びシャーペンを走らせるのだった。









現在、PM6:08

勉強に集中していたが、そろそろ腹が減ってきた。
だが先にも言った通り家族は出払っており、家には自分一人…。

「ハァー…ラーメンでも食おかいな」

そう思い立ち上がろうとした時、




ピンポーン




来客を知らせるチャイムが家に響いた―…。



「ハイハイ、ちょぉ待っとってくださいよ〜っと。どちらさんで…ぇ?」

「あ、あの…こんばんは」


玄関のドアを開けた先には居ないはずの恋人…桜井 良がいた。

「な、桜井!?何しとんねん…ってか何でおんねん!!?」
「す、すみません!め、迷惑だとは思ったんですけど…あの、コレ…」

そう言い、両手で持っていた白い箱を胸の辺りまで持ち上げてみせる桜井。
今日という日と箱…ここから察するに、中身はケーキだろう。

「こ、コレ…どうしても渡し、たくて…。あぁああ!来るなって言われてたのに厚かましく押しかけてきてスミマセン!ほんっとスミマセン!!」
「いやいやいやいや;;『会われへん』とは言うたけど別に『来んな』とは言うてへんし!…と、とりあえず中入りぃや。寒いやろ」
「はうっ!でも、勉強の邪魔を…」
「ちょーど飯にしよ思とったから、構へんよ」
「……じ、じゃあお言葉に甘えて…」
「ほい、どーぞ」







桜井を家へあげ、自室へ通し適当に座るよう促す。
…といっても、桜井が今吉宅を訪れるのは初めてではないので、もう定位置になりつつある場所へ腰を降ろし机にケーキを置いている。


「ほー、そんでケーキ持ってきてくれたんか」
「は、はい!受験勉強大変そうですし、疲れた時は甘いものだっていうんで…。あ、あと…」
「ん?」
「く、…クリスマス……ですから…」

頬を朱に染めボソボソと話す桜井。
そんな仕草が可愛くて。
チョイチョイと手で彼を自分の所まで呼び寄せると、クイッと手を引き抱き締める。

「い、いいい今吉さん!?」
「おおきにな、桜井。ごっつ嬉しいわ」
「っハイ!」
「…ケーキ、開けてえぇ?」
「ハイ!もちろんです」


桜井を胡座をかいた自分の脚の間に座らせると、今吉はケーキの箱を開けた。
そして、目にした物に驚き目を見開く。
…いや、線目なので実際は違うが。


真っ白な生クリームのケーキ。
雪原を思わせるそこには鮮やかに真っ赤に染まる苺が数個と砂糖で作られたサンタクロース。
その間にはチョコプレートが乗っているのだが、そのプレートにチョコペンで書かれた文字は……





『合格祈願!ガンバレ今吉さん』





「……。」
「…あ、あのっ、今吉さん?」
「……っく」
「??;;」
「っあははははははは!!!ごっ、合格祈願て!!今日クリスマスやでっ、普通『Merry Christmas』とかちゃうんかい!あはははははっアカン、腹痛いっ!!自分ホンマおもろいなぁ!!!」
「はわぁっ!!ス、スススススミマセンッぼ、ぼく、つつつついっ!受験の事で頭いっぱいでっ;;」
「別に桜井が受験するわけやないんにな〜。あー…わろたわろた。ほな!早速やけどケーキよばれよかな」
「どうぞ。…味は保証できませんが……」
「え、このケーキ桜井の手作りなん!?」
「あぁあ!スミマセンっそうなんですっ、スミマセン!!」
「すごいなぁ!ごっつ美味そうやんっ、おおきに桜井!」
「そ、そんな滅相もないですぅ!」
「いや、ホンマに。こんな可愛くて料理上手い恋人がおって、ワシは幸せモンやのぉ〜」
「そ、そんな事ない、です…よ」

そう言って、照れて俯く桜井。
そんな可愛らしい態度に我慢など出来るはずもなく、俯く彼の頬に手を沿え輪郭をなぞる。
咄嗟に顔を上げた桜井の唇を、今吉のそれが塞ぐ。

「…っん、ふ、…ぁ、」
「ん…桜井……」
「んぅっ!…んく、いま…よっ、さ…」


しばらくの間口付けを堪能し、唇を解放する。
クタリと今吉にもたれかかり、肩で息をする桜井の髪を耳にかけながら、彼の耳元で囁く。



「…なぁ、桜井?今日一日勉強ばっかしとったせーで運動できてへんねやんか」
「?は、はぁ…」
「…せやから後で、オレの運動に付き合うてくれる?」
「……っ!!」

純粋な桜井だが、“運動”の意味が解らぬほど子供でもない。
直接的な単語を言われたわけではないが、それでも顔を真っ赤にさせ答えられずにいる桜井に……



「な?……良?」



「っ……は………い。ぼくで良ければ…どうぞ……召し上がってください……」


今吉はたった一言で是と応えさせた。




…ケーキに乗っている苺よりも、

もっと紅く瑞々しい苺を食べるまで、


あと少し…。





◆◆◆





『本日はクリスマス』


…違ぇよ!って話ですよね!!
遅くなってスミマセン!!
何でもう26日なんだっ!!;;

コンビニに行った時、合格祈願サクサクパンダを見つけたので^^;
もうそんな時期ですか…
早いものです(ハァ)


2009.12.26.土 作成
2010.1.18.月 移転


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