記念・企画Novel

□【どんな色が好き?】
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此処はとある保育園―…



「で、何でオレがトナカイなんだよ?」
「ピッタリじゃないですか……色的に」


今日はクリスマス。
この保育園では、本日クリスマス会が行われる。
先生達がサンタクロースとトナカイに扮し子供達にプレゼントを配る…というものだ。
因みにこのプレゼントは“サンタさんへの手紙”という事で、事前に欲しい物を子供達に書いてもらい、ボク達が買いに走った。
…まぁ、小さな子供が欲しがるものだし、そんなに苦労することなく揃えられたのだけど。

そして今何を揉めているかというと、誰がトナカイの着ぐるみを着るか…という事である。…もちろん赤鼻を着けて。


「ほらほら!もう子供達来ちゃうよ!覚悟決めてさっさと着なさいよ、青峰君!!」
「だから、何でオレなんだよ!サイズの問題なら緑間だって別に着れんだろ!?」
「オレは駄目だと言っているだろう。今日のカニ座のラッキーアイテムはサンタの帽子だと『おは朝』で言っていたのだよ」
「んじゃあ帽子だけ貸してやっから、角の間に乗っけとけよ」
「そんな不恰好なトナカイがいてたまるかっ!!」

ずっとこんな押収が続いている。
子供の面倒を見る側のはずが、よっぽど子供です。

サイズ的に緑間君か青峰君が適任なのだ。
ボクや桃井さんは普段のエプロンの恰好のまま。
先生として教室にいる。

「はぁ…どうしようテツ君?本気でもう子供達来ちゃう」
「…仕方ありません。二人ともジャンケンでもしてとっとと決めて下さい。」
「てめ、テツ!お前自分が着ないからって!!」
「いいじゃないですか、トナカイ。可愛いですよ?」
「そーゆー問題じゃな「いいから早くして下さい。今日は忙しいんですから」……ちっ。…ジャンケンやんぞ緑間ぁ!さーいしょはグーッじゃんけんっ……」







「トナカイ、やっぱり似合ってますよ。…青峰君」
「……ウルセー」
「ふん、当然なのだよ。オレは人事を尽くしているからな」
「……お前今日ぜってぇ覚えてろよ?サンタプレーしてやっからな」
「なっ!」
「はいはい園内で醜い争いはしないで下さい。じゃあ段取り通りお願いしますね」
「………あぁ」
「………うむ」









「ハーイみんなー!おはようございますっ!!」
「「「「おはようございまーす!!!」」」」
「さて!今日は何の日かな〜!!?」
「「「「クリスマスー!!」」」」
「ハイ、そうですね。クリスマスといえば誰が来てくれますか?」
「「「「サンタさーんっ!!」」」」
「だいせーかーい!!みんなが今年1年いい子だったから、今日はなんと!……サンタさんが来てくれてまーす!!」
「「「「キャー!!」」」」
「それじゃあ、みんなでサンタさんを呼んでみましょう」
「「せーのっ」」

「「「「「「サンタさーんっ!!!」」」」」」


ガラッ


「メリクリなのだよ」


「キャー!サンタさんだー!!」
「あ、トナカイさんもいるー!!」
「カワイイーっ!!」


…緑間君。
『なのだよ』口調はやめて下さいってあれほど言ったのに。
そして意外と人気がある青峰君のトナカイ。
何だかんだでちゃんと角も鼻も着けている。
やれば出来るんです、あの人。


「今日は、いい子のみんなにプレゼントを持ってきたのだよ。順番に名前を呼んでいくから、元気よく返事をしてトナカイさんから受け取るんだぞ」
「「「「はーい!!」」」」
「トナカイ用意はいいか」
「……。(コクコク)」
「じゃあ呼んでいくぞ……相田リコちゃん!」
「はぁーい!!!」


―――…


「次は…黄瀬涼太くん!」
「はいっスー!!!」

ダーッ!と青峰トナカイの所へ駆けていくのは黄瀬涼太くん。
ボクの受け持つ5歳クラス天使組の男の子。
いつも明るくて無邪気で元気な子だ。

「……。」
「サンタさん、トナカイさん!ありがとうっス!!」
「……。(コクン)」
「どういたしましてなのだよ」

涼太くんはプレゼントを受け取ると嬉しそうにニコニコしながら自分の席に戻っていった。

そして全員にプレゼントを配った後は、緑間サンタと青峰トナカイを含め、みんなで椅子取りゲームやフルーツバスケット、はないちもんめなどのお遊戯をしてそろそろ終わりを迎える。


「さぁーてみんな〜?そろそろサンタさんとトナカイさんは次のお友達の所へ行かなくちゃいけません。だから今年はこれでお別れです!!」
「「「「えー!!!!!」」」」
「みんながいい子にしていたら、また来年のクリスマスに会いに来るのだよ」
「「メリークリスマスっ!」」
「バイバーイ、サンタさーんっ、トナカイさーんっ!」
「またねー!!」


ガラッ…ピシャン。


「あーあ、かえっちゃったっス〜」
「ねー。もっとあそびたかった」
「ってかさいごトナカイさんしゃべったよな」
「ホントだー!!トナカイさんってしゃべれるんスねーっ!!」


「…そこにツッコミますか。子供は視野が広いですね。」
「それもなんか違う気がするけど…。(コホン)じゃあみんな!お母さんお父さんがお迎えに来てくれるまで、いつも通りお遊戯しようね!!」
「「「「はーい!!!」」」」









あれから大分時間が経ち、今は夜の7時。
他の子達が帰ったあと、
お迎えが遅い涼太くんだけが残る。
そして大体はこうしてボクが残り、涼太くんのお母さんが来るのを待つ。

「涼太くん」
「あっ、くろこせんせー!」

涼太くんは絵を描いていた。
だがそれはいつも使っているクレヨンではなく、今日のクリスマス会のプレゼントで貰ったもので…。

「早速新しいクレヨン使ってるんですね」
「うん!いっぱいいっぱいおえかきするっス!!」
「…前のはどうしたんですか?」
「あるっスよ!」

ゴソゴソとお道具箱の中を漁り、クレヨンの箱を取り出す。
フタを開けて見ると、どの色もほぼ平等に短くなっていた。
だが、水色のクレヨンだけは少し長めに残っていた。


「たくさん絵を描いたんですね。短くなったからサンタさんに新しいクレヨンお願いしたんですか?」
「はいっス!」
「でも、水色は結構残ってますね」
「う?あっ!あのね、みずいろは3ぼんめなのっ」

ほかのは2ほんめなんっスよ〜。


とニコニコして報告してくれる涼太くん。



「そうなんですか?」
「うん!えっとね、みどりませんせーは“みどり”と“くろ”と“うすだいだい”。
あおみねせんせーは“あお”と“くろ”と“うすちゃいろ”。
ももせんせーは“ももいろ”と“あか”と“うすだいだい”。
くろこせんせーは“みずいろ”と“くろ”と“うすだいだい”なんス!
どのせんせーもみんな すきっスけど、くろこせんせーがいちばん すきだから、いちばん みずいろつかっちゃうんス!」


にこにことほんわかした笑顔を向けてくれる涼太くんに、心が温かくなる。
僕にもサンタさんがプレゼントをくれたみたいです…。

お返しに小さなサンタクロースさんの頭を撫でる。

「…そうですか。ありがとうございます」
「ん?どうしてー?」
「涼太くんが、たくさん描いてくれるから嬉しいんです。」
「へへっ、よかった〜。どういたしまして!」
「じゃあ、続きお絵描きするところ、先生も見ていていいですか?」
「うん!いいよっ!」


元気よく、いいお返事をした涼太くんは、またお絵描きを再開した。



手に持ったクレヨンは



みずいろ――…




◆◆◆




可愛い黄瀬が書きたかったんです^^←

昨日友達とカラオケで『お母さんといっしょ』の『どんな色が好き?』を久しぶりに歌ってきました(何しとんねん)
いや、X'mas前って事で『赤鼻のトナカイ(お遊戯ソング)』を歌ったら懐かしくなって…(笑)

クレヨンの記事を調べていたら『はだ色』の呼称が『うすだいだい』や『ペールオレンジ』に変わったそうです。
“肌の色はこれ!”という固定概念を拭う為と、肌の色で人種差別などにならない為らしいです。
私、全然知りませんで;;
なので作中も『うすだいだい』にしました。

…てか、普通に青君を「肌の色的」にトナカイにしてしまいましたよね;;
ゴメン青君!でも差別じゃないよ!!

そして平仮名ばっかで読みにくくてゴメンなさい;;


2009.12.24.木 作成
2010.1.18.月 移転


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