記念・企画Novel

□【それはつかの間の】
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テツが風邪引いたらしい




どうやって仕入れてくんのか知らねーけど、情報通のさつきが言うのだからそうなんだろうけど…

「何でオレに言うんだよ?」
「ホントは私がお見舞いに行きたいのよ?部活がなければずーっと付きっ切りでテツ君の看病するのに!!」
「…で?」
「どーせ今日も部活サボるんでしょ?だったら私の代わりにテツ君のお見舞いに行って来てよっ」
「はぁ!?何でオレがっ」
「…いい加減素直になんなさいよ」
「…なにがだよ」
「マネージャーの観察力ナメないでよね!!青峰君もテツ君もホンットに世話がやけるんだから」
「……るっせー」
「じゃ、お願いね!あっ、何かお土産持ってきなさいよっ!?」
「は、ちょ、まだ行くって言ってな…!……もういねーし」


なんと行動の早いこって
我が幼なじみながらほんの少し感心する。

「…つか、別に行かなくてもいいよな」

アイツだって
オレになんか会いたくねぇだろうし…。





……って思ったクセに何でオレはこんなとこに居んだ?

無意識なのか何なのか…
さつきの断言通りオレは部活をサボり、これまたさつきの言う通りテツの見舞いに来ていた……更にさつきに言われた通りご丁寧に土産まで買って。


ピンポーン


インターフォンを鳴らすと向こうから反応が返ってくる。
少しのやり取りの後、玄関のドアが開き招き入れられる。

『テツヤなら自分の部屋で横になってるから』

と、おばさんに言われ何度も行ったことのあるテツの部屋へと向かう。

ドアの前に立ち、一応小さくノックしてみる。が、応答がねーからそのまま部屋へと踏み入る。


「…テツ?」
「……」
「寝てんのか?」


テツに近づいてみると、顔を赤くし、少し荒い息を吐きながら寝ていた。

そのまま奴のベット脇に腰を下ろし胡座をかく。

少しの間、テツの寝顔を見る。
相変わらず白い。
風邪を引いている今だからこそ少し色づいているが、それにしても白い。

寝苦しいのか
テツが寝返りをうとうとした時にサラッと髪が目にかかっていた。
それを起こさないようになるべく優しく触れようとしたのに……。

「…んぅ、ダ、レ……?」


起こしてしまったらしい。









何かが髪に触れた…
そう思って目を開けると、そこには居ないはずの人が居た……。

「ぇ、えっ!!?…あ、おみねくん?何でウチに…?」
「…さつきが『テツ君が風邪引いたからお見舞いに行ってきて』っつーから」
「…そ、ですか」
「おう。…で?具合どーなんだよ?」
「熱も下がってきましたし、鼻づまりも大分楽になりました。少し咳は出ますけど」
「…そっか。んじゃ良かったな」
「ぇ?」
「あ?だって、大した事ねーなら直ぐにバスケ出来んじゃん」
「!……そう、ですね」


“何か変な事言ったか?”とでも言いたそうな青峰君。

その言葉が…
まだバスケが大好きなんだ、と
僕に伝えてくれた―…

それがどれだけ嬉しかったか、きっと君は分からないだろうけど――…


そう僕が考えている時、青峰君が後ろ手をつくとガサッと音がした。

「あ、忘れてた」
「?何ですか?」
「土産、持ってきた」


ガサガサとビニール袋に手を突っ込み見舞いの品であろうモノを取り出し、僕に渡してくれる。

「アイス?」
「マジバのシェイクにしよーか迷ったんだけどよ。寝たら溶けんじゃん?アイスなら冷凍庫入れときゃどーにでもなるし…好きだろ?そのアイス」
「…わざわざありがとうございます」
「まぁ、風邪引いてる時くれーわな…。いつものよりちょっと豪華なんだぜ?『ゴリゴリ君リッチ』だからな。しかも『いちごミルク味チョコチップ入り』っ!お前甘いモン好きだもんな」
「……はい。ありがとう、ございます」
「礼はいいから早く食っちまえよ。溶けちまうから」
「じゃあ…いただきます」
「あぁ」

アイスの袋を開け、取り出して口にくわえる。
熱でほてった身体には冷たいものがとても気持ちいい。


パッケージを見ていた青峰君が何かを発見する。

「あ、コレおみくじ付きだってよ!お前楽しみだろ」
「…そんな子供じゃありません」
「ははっ」

棒の所におみくじが焼き印されているようです。
“食い終わった後も楽しみがあってイイな”と昔のように笑う青峰君…。
彼の方がよっぽど子供です。

そうしてアイスを食べ進めていき、ついに最後の一口。
それを食べ終えおみくじを見ると、その結果に頬が緩んだ。
結果を目に焼き付け、食べ終えたアイスの棒を袋に入れベットサイドへ置く。


「で?くじの結果はどーだったんだよ?教えろ」
「…ナイショです」
「は!?んだよテツ、ずりーぞっ!!」

よっぽどおみくじの結果が気になるのか、食らい付いてくる青峰君。
でもタダで教えるのでは面白くない。

そうですね…


なら……


「…じゃあ僕が眠るまで…手、握っててくれますか?」
「あ?な、でっ、そんなことっ!」
「……。」
「………。」
「…だって、、、」
「〜〜〜っわーったよ!!オラッ手、出せよ!!」
「はい」

照れているのだろう。
青峰君は少し赤い顔をしていた。
布団から少し手をはみ出させると、乱暴だが暖かい手に包まれる。

「…暖かいです」
「お前さっきまでアイス食ってたから余計にだろ」
「かもしれません」
「…ホラ、握っててやっから寝ろよ。寝みーんだろ?」
「……ん」
「…おやすみ、テツ」


青峰君に…かつての相棒の声に安心したのか、それが子守唄代わりとなり、僕は眠りに落ちていく…。
落ち切る前に、
“おやすみなさい”の代わりに、

彼の手を強く握る事を忘れずに―…



目が醒めた時、彼は居ないかもしれない。

アレは熱に冒された僕の願望かもしれない。

夢かもしれない。


でも

だとしても


とても幸せな夢でした―…


おみくじの結果…




『超大々吉』




◆◆◆




初、シリアスじゃない青黒でした!!
二人とも激しく別人な罠^^;
でも、実際青君はいい子だと思うのでヨシとします!してください←

ガリ●リ君リッチのいちごミルク味かなり美味しかったです♪
是非ご賞味あれっ!!
あ、おみくじの結果は私のです(笑)
『超大々吉』で嬉しかったです。(小学生の作文か)



2009.12.23.水 作成
2010.1.18.月 移転


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