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□ありがとうシリーズW
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忌ま忌ましいベラトリックス・レストレンジに私は殺された。
夫のリーマスも隣で戦っていた。だけど、私は死んだ。
そして、リーマスも死んだ。
私は閉じていた目を開けて辺りを見渡した。
真っ白な世界はどこが天井でどこが壁かわからない。
「や、起きたんだ?」
不意に声のした方にはリーマスがいた。
リーマスは、どうやら私より早く目覚めていたようで手を握ってずっと側にいてくれたらしい。
「ここは何処?」
「僕もわからない。とりあえず、歩いてみようか?」
リーマスは、相変わらず優しくて「立てる?」と手を貸してその繋がったまま歩いた。
「ねえ、リーマス…私達…死んだの?」
そう問えばリーマスは誤魔化すように微笑んで下を見た。
それに釣られて私も下を見ると
まるで湖のように床下が透明になって何かが映し出される。
「私と…リーマスだ。」
二人は、隣同士で横たわり繋げない手を近くに死んでいた。
まるで、眠っているようだった。
だけど、
死んでいるんだ。
すると、すぐに床下は波打つように元の真っ白な世界に戻る。
現実が蘇る。
「あーあ、本当に死んじゃったんだね…あーあ…‥」
私は投げやりな口ぶりをしたが感情が抑え切れなかった。
一気に吐き出すように私は歯ぎしりをして俯き、片手で顔を覆う。
「悔しいっ悔しいっ悔しいっ悔しいーッ!」
「急にどうしたの?ドーラ」
「悔しいの。あのベラトリックス・レストレンジに殺されたことが…ああ、もうっ何であんな女に殺されちゃったのよ私!」
イライラと時折、涙目の瞳を擦るのが乱暴になる。
思い出せば出すほど鮮明に蘇る死に際の瞬間、
レストレンジは笑っていた。それも飛び切りの高笑いをだ。悔しさは死に際にもあった。
その時はレストレンジに負けて悔しかった。それだけだったのに今はまた別の悔しさがある。
「リーマスを…もし、殺されなかったらリーマスを守れたかもしれなかったのに…っ!!」
ついに零れ落ちるように涙が指の隙間から落ちて行った。
感情は高ぶり、押さえられなくなる。
「ごめ、ごめんね、リーマスっ…ごめんねっ…」
繋いでいる手をギュッと握り締めてはひたすらに誤り続けた。
後悔しかない、
悔しくて堪らない。
ベラトリックス・レストレンジに殺された私が悔しい
こんなに弱い私が悔しくて堪らないんだ。
「なんでドーラが謝るんだい?」
私はぐちゃぐちゃに泣き腫らした顔を上げるとリーマスも泣いていた。
小さく小刻みに震える声でリーマスは言った。
「守れなくてごめんね、ドーラ…君を守ると誓ったのに僕は…守れなくてすまない」
「リー…マ、ス…リーマスっリーマスっうわああぁあああん」
私は泣いた。声を出して泣いた。
もう、立派な大人なのに
一児の母なのに
そんな私をあやすようにリーマスは優しく包んで一緒に泣いてくれた。
時折、頬に落ちてくるリーマスの涙は暖かった。
「ねえ、リーマス」
「なんだい?」
「一緒に泣いてくれてありがとう」
「いえいえ」
二人は、手を繋いで歩き出した。
「ねえ、ドーラ」
「ん?なあに?」
「僕の子供を産んでくれてありがとう。」
「いえいえ、だって私達が生きた証が残せるもの」
「ああ、そうだね」
ぽちゃん、と雫が床に落ちると二人が過ぎ去ったそこには揺り篭で健やかに眠る証―テッド・リーマス・ルーピンがいた。
(いつか僕らから君へのありがとうを伝えに行くよ)
20110827【ありがとうシリーズ】