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□ありがとうシリーズT
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それから、ピーターはあまり三人と話さなくなった。行動も最小限になり、三人を敬うというか持ち上げるような性格になった。



「どうかしたの?」



いつものようにジェームズやシリウスがはしゃぐ中、木陰で涼んでいた隣のリーマスはそうピーターに問い掛けた。




「別にどうもしてないよ」



ピーターは、いつものように笑ってみせたが
リーマスは、どうも腑に落ちない様子だった。どうもしてない様子じゃない。



「何かあったんじゃない?この間からずっとピーター僕たちとなんか…距離を置いてるような気がするんだよ」

「そんなことないよ。僕はいつも通り」

「嘘はよくないんじゃないかな、ピーター」




ピーターは固まった。
不意に手に力が篭る。せっかく、作り笑いをしていたのに歪みそうだ。





「…どうせ、本当の気持ちなんてわかんないよ」



今にもはち切れそうな想いがのしかかる。それをぐっと飲み込むように声を出した。




「そんなの言ってみなきゃわからないじゃないか。もしかしたら、良い解決法が見つかる…かも…」





リーマスは、言葉を続けられなかった。なぜなら、ピーターの表情があまりにも切なかったからである。





「じゃあ、君は―――」




ピーターの声と言葉は、リーマスの心の中でこだまする。血の気が引くようなそんな感覚もある。



その時だった。リーマスがピーターの質問に答えられないでいると
向こうからシリウスが大声をあげる。




「おーい、お前らもこっちきて遊ぼーぜっ」

「うん、わかった」

「リーマスも来いよ!」

「僕は…いいっ!ここにいる」

「あいよー」




リーマスは、首を振って隣からいなくなるピーターを見つめた。



「ぎゃはははは」

「おっと、わっピーター落ちた落ちた!」

「何してんだよっピーター」

「ばっかだなぁははは」

「ごめんっ、あははは」





リーマスは、もう一度ピーターの言葉を思い出す。







『じゃあ、君は…鼠がどうしたら狼や犬や鹿に追い付けると思う?』







何も言えなかったリーマス。
そんな自分が今は腹立たしくて仕方なかった。




「僕のせいだ…」





リーマスは、ぎゅっと拳を強く握り締めて呟いた。


あんなに哀しい表情をしたピーターを見るのは初めてで胃が痛む。


そんな後悔とうやむやな気持ちが立ち込める中、なにも解決はしなかった。


リーマスは、思いきってジェームズやシリウスにも相談をしてみた。




「ピーターがそんなこと言ったのかい?」

「うん」

「別にそんなの関係ねぇだろ友達なんだから」




意見は人それぞれだってわかっていたが直接聞いたリーマスだからこそ理解できることもあった。




「それはピーターには通用しないと思う。あの子はきっとわかってるんだよ…僕らとの‥その…違いに」

「回りくどい言い方すんのは止めろよ」




シリウスはイラッとしたのか少し荒い口調になり、
それに対してリーマスも不機嫌になる。




「わかってるくせに僕に言わせるの?」

「意味わかんねぇよ」

「シリウス落ち着けって」

「じゃあ、ジェームズはわかんのかよ?俺らとピーターの違いってのが」

「そんな言い方はよくないぞシリウス。だから、リーマスは回りくどく言ったんだ」

「そうやって気遣うから逆にピーターが距離を感じるんだろう」




今度は仲裁に入ったはずのジェームズに矛先は向けられた。
いつもなら、絶対喧嘩をしない二人だが今回は険悪ムード。


ジェームズもシリウスの言葉にカチンときたようで眉を寄せた。




「君は気遣うってことを知らないのかい?」

「んだよそれ。全部俺が悪いみてぇな言い方しやがって」

「そう聞こえたんならそういうことなんだろう」




ジェームズは、ツンとしてシリウスにそう当たる。
いつも仲の良い三人だが今回は空気がピリピリとして誰も引き下がろうとはしなかった。




「じゃあ、ジェームズのその気遣いでピーターの悩みがなくなんのかよ!」

「それは」

「なら、はっきりピーターに言った方がいいだろ」

「逆にシリウスに聞くけど君ははっきりピーターに言えるのかい?」

「…」

「傷付くとわかっているのにシリウスは言うんだ…酷いねシリウス」




シリウスは、ガッとリーマスの胸倉を掴み上げた。表情は怒りというよりも動揺のようにも見えてリーマスは無表情でそんなシリウスを見据えた。




カタ…、


そこへ現れたのはリリーだった。




「えっと…なにしてるの?」

「リリーこそ、どうしたんだい?」

「別に用はないわ。ただ」



あからさまにリリーの登場に喜ぶジェームズだが
リリーは素知らぬふりをして口を開いた。




「さっき、そこにピーターがいたのよ」

「ピーターが?」

「ええ。何してるのって話し掛けたら…何でもないよって笑うの。とても哀しそうに」






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