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□恩返し。
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ある日のことだった。僕は例の如く魔法薬学の授業で失敗してスリザリン(特にマルフォイ)に悪戯された。
格好悪い。そんな時だった。
「ネビル大丈夫?」
「ル、ルーナ!」
床に転がっていると目の前にはルーナがしゃがんで首を傾げて僕を見ていた。
「転んだの?」
「え、あ、うんっ…そう転んだんだ」
「凄い転び方したんだね。ボロボロだよ」
「大丈夫だよっ。―っ!!」
ルーナに心配かけまいと勢いよく立ち上がったは良いが足が痛くて再びしゃがみ込んだ。
「医務室に行った方がいいよ」
「うん、そうするよ…」
格好悪いところを見せてしまってしょぼんとした僕は足をひょこひょこ引きずりながら歩いた。
するとルーナがくいっと裾を引っ張る。
「ルーナ?」
「そっちじゃないよ。こっちだもん」
「………。」
結局、僕はルーナについて来てもらって医務室に辿り着いた。
「ありがとうルーナ。僕って本当駄目な男だよね」
はは、と自分で自分を笑う。正直、こうやって自分を笑うのが1番楽だった。
「ネビルは駄目じゃないよ。やれば出来る子だって私知ってる」
「えっあ、そんなっ僕は」
「ネビルはやり返さなかった。偉いと思う」
「いや、それは…ってルーナ見てたのっ?」
ルーナはそのまま何も言わずに頷いた。
僕はルーナの優しさというよりも気遣う心に魅力を感じてしまった。
皆は、ルーナを不思議だとかおかしなルーニーとか言うけど僕は違う。
人と違う考えを持ってこそ個性だと思うし、そう言われても気にしないルーナは凄いと思う。とても素敵な人だ。
ちゃんと僕のことを見てくれている。
僕にとってのルーナは
*
僕の足が治って来た頃。僕は相変わらず一人でいるとルーナがいた。
しかし、裸足でだ。僕は驚き思わず駆け寄った。
「あ、ネビル。おはよう」
「おはようルーナ。じゃなくて靴はどうしたんだい?しかも、ソックスも穿かないで…怪我でもしたらどうするんだ」
「いいの慣れてるもん。きっと悪戯好きな妖精だよ」
二人を通り過ぎる生徒はチラチラとルーナの足元を見ればクスクスとせせら笑いをする特にスリザリンだ。
きっとスリザリンがやったに違いない。
だけど僕には問い詰める手段もなくて無力だった。
「他にもあるの?」
「靴とソックスだけ」
「僕探そうか?」
「いいよ、最後には見付かるから」
「でも、足が…綺麗なのに」
「…」
ネビルは自分の言葉に顔を炎のように赤く燃え上がらせて口ごもる。
「ごめっ、あ、僕っ…何言って、ごめんっ」
「ネビルって面白い。私デザート食べてくる」
そう上機嫌に言ってルーナは去って行った。
「ルーナ…」
ルーナは、とても優しかった。そんな優しさをくれるルーナに僕は何をしてあげられただろうか。
ネビルはルーナの靴とソックスを探して回った。
途中何度もスリザリン生に痛め付けられたがめげずに聞いて回ったり
隠されてそうな場所も探した。
「池の傍に置いた」という情報でネビルは何度か池に落とされたが確かめることは出来た。
そんな重ねる苦労もあってついに見付けた。セットで見付かった。
しかし、場所はフィルチの部屋。
「本当なの?フレッドにジョージ」
「疑うなんて酷いぜネビル!」
「確かに先日、あの部屋に失敬しに行った時に追加であったよ」
「ああ、紫と橙色のしましまソックスなんてルーナぐらいしか穿いてるの見たことないから確かだ」
ネビルは双子の情報を信用した。しかし、どうやってその靴とソックスを取りに行くか悩んだ。すると、双子はそんな悩めるネビルに神の手を差し延べたのだ。
「「俺達がフィルチの部屋まで案内してやろう」」
そしてそれはすぐに決行された。双子はなにやら怪しい地図を片手に抜け穴を潜って行く。そして、先頭のフレッドがどこかの床下で上を指差した。
「ここだ」
ネビルは一気に緊張が高まり、正直漏らしそうだった。必死に膀胱を我慢して変な汗が流れる。
フレッドが床を開けて隙間から誰もいないことを確認すると埃臭いフィルチの部屋に出た。
「さあ、ネビル探せ。急げよ」
「うんっ」
ネビルは埃に塗れながらも必死に物の山を掻き分けて探した。
「まずい、フィルチが戻ってくるぞ!」
「え、どどうしわあっ!」
ネビルは床に置いてあった本に足をひっかけて転んでしまった。
その途端に体が物置状態の山に倒れる。
「大丈夫か?ネビル」
「うん、ゲホッ大丈夫」
するとネビルは埃塗れのその中にルーナの靴とソックスを見付けた。
「あったよフレッド!ジョージ!」
「よくやったな、ネビル」
「早く来い!フィルチがそこまで来てる!」
ネビルは靴とソックスを抱えて急いで床下に戻った。
最後にジョージがその床穴をパタンと閉めると同時に部屋の扉が開いた。
うまく逃げられたのだ。
やっと抜け穴から出れた三人は服に纏わり付く埃を払いながら笑った。
「いやあ、中々なスリルがあったなジョージ!」
「ああ、フレッド!あんなに緊張したのは命に関わる実験をしていた時以来だ!」
「そんな緊張感だったんだ」
その時だった。目の前からルーナが近付いてくる。
三人には気付いてないようでどこか違う場所をぼーっと見詰めている。
「行けよネビル」
「ルーナに届けるんだろ?ほら」
双子に後押しされ、ネビルは頬を欝すらと染めた。
「ありがとうフレッド、ジョージ」
そう言ってネビルはルーナの前に現れた。
ようやく目線がネビルにくる。
「やあ、ネビル。よく会うね」
「ルーナ、その…これっ」
「あれ、私の靴とソックス。ネビルが見付けたの?」
ルーナがそれを嬉しそうに見詰めてそう問うと照れたように頷くネビル。
ルーナは、それを素足に穿いて見せた。
「お気に入りのソックスだったの」
「うん、よく似合ってるよ」
「見付けてくれてありがとうネビル」
その微笑むルーナに更に顔を赤くするネビル。
これで僕は君に少しでも恩返しが出来ただろうか。
それはきっとルーナにしかわからないのだとネビルは思った。
(若いな)(ああ、実に若い)(そして僕らはとても役にたった)(勿論さ。あながち恋のキューピッドさながらさ)
物影で見詰める双子座キューピッド。
20110928