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□耳元で愛を囁く
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大広間に広がる薔薇の香り。それは、とても綺麗で美しい薔薇だった。



「おはよう、ローズ。」

「ええ、おはよう。」



ローズは間を置いて言う。



「スコーピウス・マルフォイ」



と厭味たらしくその名を呼んだ。一方、スコーピウスはにまにまと仕切に微笑みを顔に貼り付けている。


大広間は少々ざわめいていた。その原因は今ここにあるスコーピウスが持つ大量の薔薇の花束だ。


嫌でも目立つ赤い薔薇を束にし、スコーピウスは朝食の食欲を誘う香りさえも消していた。




「今日はいい朝だね」

「貴方が現れなければね」

「いいや、君は僕が現れた方がいい朝になるよ」




既に薔薇の香りにローズは、食べかけのスコーンを皿に置いた。

スコーピウスは、周りが迷惑がっているのなんて気にしないでその薔薇の花束をローズに突き出した。




「ハッピーバースデー、ローズ・ウィーズリー!」



少し驚いたのかローズは、その薔薇の花束を躊躇いつつも受けとった。



「歳の数だけ束ねてみたよ。」

「あら、ありがとう。けれど歳の数まで少し足りないわよ」



うっかり、脳みそも足りないんじゃないのと言いかけたローズだが妙に堂々とするスコーピウスに言葉を飲み込んだ。



「今、来るよ」



そう言った途端、窓からふくろう達が入って来た。郵便の時間だ。


そのふくろうの内、数羽のふくろうが何かを食わえてこちらにやって来る。



それは、真っ赤な一輪の薔薇。
それを一羽一羽スコーピウスが頭を撫でながら受け取ってローズが持つ花束に差し込む。




「これで問題ないだろう?」



最後の一本を持って鼻に近付け、香りを嗅いでから愛しく口づけをしてローズの髪に刺す。




「ローズ、君はこの真っ赤な薔薇と同じ名だ」



スコーピウスは、そのままローズの髪の毛をさらりと掬い上げ、薔薇と同様に口づけをする。



「だけど、君はこの真っ赤な薔薇より美しいよ。」




少しばかり大広間にざわめきが続いた。ほとんどの女子は、スコーピウスのファンであり信者である。その女子達は顔を真っ赤にしてあたかも自分が囁かれたかのように恥ずかしがっていた。



言われた当本人は、無表情でスコーピウスの瞳を見つめていた。
上目遣いで見つめてから、ため息を零して立ち上がった。



「プレゼントは有り難く受け取るわ。それじゃあ、さようなら」



まるでつれない彼女だったがスコーピウスは、構わなかった。むしろ、満足げにローズの後ろ姿を見つめてから後を追う。



二人が出て行った大広間にはざわめきが酷く続く。



教職員テーブルではネビルがコーヒーを飲みながらにっこりとした。





(今日も平和だなぁ。)




こうして、この話は酒の勢いでうっかり漏らしたネビルからロンへ
激怒したロンがドラコへと続くものだった。






20110705

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