宝物
□遥かな時間(とき)と今あるすべて
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「れーん。」
「昌浩、俺は『紅蓮』だ。ぐ・れ・ん。」
「ぎゅ……れー…ん?」
「その調子だ昌浩。ぐ・れ・ん。」
「ぐれ………、ぐれ…ん。ぐれん!!!」
昌浩がそう言った途端紅蓮は息を呑んだ。
「まっ昌浩…、凄いぞお前は!!!!!偉い偉い。」
昌浩はパッと顔を輝かせ、余程嬉しかったのか紅蓮の頬に唇をつけた。
「なっ………」
紅蓮は今度は放心状態となった。
(昌浩がおっ俺に接吻を……)
と言っても昌浩はまだ子供であってこれも親にする無邪気な気持ちによるものなのだが、紅蓮はこの事まで考えが及ばないらしい。
そして紅蓮と同じような状態になっている人が部屋の入り口の前にもう1人いた。
「紅蓮………。お前はわしの昌浩に何をさせているのじゃ?」
そこに立っていたのは、大陰陽師安倍清明だった。
「せっ清明…。いやこれは…………」
紅蓮が返事に困っていると昌浩が清明のところにせっせと歩いていき、その袂を掴んだ。
「じい様!!」
「昌浩!お前、清明のことはもうちゃんと言えるのか?!」
自分が一番だと思ってた紅蓮は相当のショックをうけたようだった。
「ふん、当たり前じゃよ。昌浩はわしの孫なんじゃ。
もう『じい様』と言えて当然だ。」
ガクッと紅蓮は膝をついた。
(くそっ、清明の奴。)
………相当悔しいようである。
「まぁそう言うことじゃ。」
ほっほっと笑いながら清明は部屋から出ていった。
……ちゃっかり昌浩も一緒に。
「あっ昌浩!!!」
紅蓮が手を伸ばしたが昌浩には届かず、昌浩は清明とともに行ってしまった。