新八受け
□[恋雨予報]
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「オマエなぁ帰るなら俺に一言声かけてから帰れよ。ほら、」
乗けてってやるからとヘルメットを差し出すが新八はそれを一向に受け取ろうとしない
不思議に思いふいに下を向いてしまった新八の顔を覗き込むと
新八は頬を真っ赤にしてぷるぷると震えていた
「なっ!?お前熱あるんじゃねぇの!?万事屋に戻るぞ新八!」
新八の腕を掴み後ろに乗れと促すがまた反応がない
仕方が無いのでスクーターから降り新八を後ろに乗せようと細い腰に腕を回すと
新八が俺の胸板を押し首を横に振った
「熱なんてありません。だから家に帰ります」
「んじゃ家まで送るわ」
「…いいです。一人で帰りますから」
一歩も譲らない新八にだんだん苛立ち無理やり後ろに乗せると万事屋に向けてスクーターを走らせた
「ちょっとっ!銀さん僕の家あっちって僕は一人で帰りますから!!!つーかこれ人さらいですからァァ!!」
「ぐだぐだとウルセェよ。今日は泊れって!!それにアレだろ、用事つってもどーせ大した用事じゃねーんだろ??」
そう言った瞬間、さっきまでの威勢が嘘のようにぴたりと治まる
「お〜い新八ぃ〜?」
急に黙り込んで張り合いがないつーか、やっぱ熱でもあんじゃねーのかコイツ
「新八?オイ、新八やっぱお前熱あんだろ?なぁ返事しろよ新ぱ「…そ……………よね…」
新八が何かボソリと呟いたが、それは雨の音とエンジン音でかき消される
何?聞こえねぇと問い掛けようとした刹那
吐息が耳にかかりポツリと微かに聞こえた言葉に思わずスクーターを急ブレーキで止めた
「なっ、なっ、おまっ!?えっ!?」
動揺し言葉が上手く出ない俺に新八は追い討ちをかけるように
まるで内緒話をするように俺の耳に唇を寄せて来た
「僕の名前…風呂場でもそうやって連呼してましたよね……」
俺の耳元から顔を離すと新八は再び下を向き、ぎゅっと俺の着流しの裾を掴む
「用事なんて無いです。恥ずかしくなって逃げたんです」
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