てにす

□骨抜き
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『痛いぃー…』

「だから湿布貼ったる言うてるやろ?」

『絶対いや!湿布なんか貼ったらおばちゃんみたいじゃん!』

「ようわからんけど湿布いらんのやな?」

『うん!ぐはっ!頷いたらく、首がっ…!』




部室で首を抑えながらもがくななしを見て思わずため息が出た。
俺としては早く部活を始めたいのだが目の前で女の子が、それも自分の部活のマネージャーが苦しんでいるのを無視するのも気が引ける訳で
(あぁ、金ちゃんまた我が儘言うてる…)



「おー、白石。遅れたばい」

「そんなん見れば分かるわ。どう見てももう部活始まってるやん」

「天気が良かったから散歩しとって気が付いたらこんな時間、に…ななし!探しとったばい!」

「いやいやいや!お前今散歩してた言うたやん!」


俺に隠れる形になっていたななしに気付いた千歳は勢いよくななしに抱き着いた。
(千歳に尻尾付いてたらきっと振りすぎてちぎれとるな)




『千歳おはよ…痛っ!』

「?」

「あー、ななし首が痛いらしいんや」

「首?」

『うん、首』

「誰にやられたと!?ちょっとそいつ蹴ってくるたい!!」

「待て待て待て待て!!蹴んなや!暴力ダメ、絶対!!」

『首痛いのは千歳のせいだよ!』

「俺?」



首を傾げながらもまたななしを抱きしめる千歳にいい加減部活始めようと思った。




『千歳って背高いでしょ?だから顔見ようと思うと首痛いの』

「千歳、しゃがんだれ。はい解決。ほな部活始めよか」

『しゃがまれると私子供みたいだからいや!』

「さっきから自分いやばっかやん!」

『バイブルなら乙女心くらい理解しろ!!』

「そういうの無茶ぶりって言うやで?」

『やる前から無理とか言わあああ!!』




ななしの有り得ない悲鳴にビックリして振り向いたら千歳がななしを持ち上げてた
(赤ちゃんを高い高いするみたいな感じで)



「ち、千歳!お前何してんねん!」

「んー?ななしが首痛いって言っとったから」

『ぎゃあああ!!高い高い高い!!地面に足が着かないの怖いいいい!!』

「ほら!ななしも怖がってるやろ!?」

「え、でもこれなら顔が近いから首痛くならんばい!」

「名案みたいな顔すなや!」

『ちちちちち千歳!』

「心配せんでも落とさん…よ」





ぎゅうっと、それはもう首を絞めるかの如く千歳の首に抱き着くななしに俺も千歳も固まった。






『あのね!首痛くても私平気だから!だって首痛いって事はそれだけ千歳と話してるって事でしょ!?だからこれは幸せな痛みなの!だから降ろしてええええ!!!』




「…白石」

「…おん」

「俺、今なら幸せすぎて死ねるっちゃ」

「…うん、わかった。わかったから10分たったら部活ちゃんと来てや」





そういい残して俺はようやく部室と言う名の愛の巣から抜け出せた








骨抜き



(あいつら10分だけって言うたのにまだイチャついとる…!!)
(ほんまウザいっすわ。ちょっと謙也さん1番最初に部室入って下さいよ)
(俺に死ねってか!あいつ昔は九州でブイブイ言わしてたらしいのに俺に行けと!?)
(ラブラブなんて素敵やわ〜!)
(小春っ!)
(なぁー!わいお腹減ったぁー!なんで部室入ったらあかんの?)
(金太郎はんにはまだ早い…)


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