てにす
□初恋リズム
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『…?あ、』
目が合ってすぐに反らされた。近頃よく目が合う千歳くんは目が合うとすぐに反らしてしまう。
千歳くんとはおしゃべりすらした事ないけど多分嫌われてるんだと思う。
「…!!き、桔平!」
「なんね」
「目、目があった…!」
ばれてないと思って花壇に向かうななしさんをじっと見てたら目が合ってしまった。
喋った事はないけど気付いたらすごく好きになっていた。そんな人と目が合っていつも恥ずかしさが上回って目を反らしてしまう。
「あー…幸せばい…」
「喋りかけんと?」
「ムリ!そんな事したら心臓壊れったい!」
「男なら度胸みせんね!」
『ふふっ』
なんだか楽しそうに話してる千歳くんと橘くんにこっちまで笑えてきてしまってこっそり笑った。
「わら、笑っとる!桔平!ななしさんが笑っとる!」
「はいはい」
「…可愛かー…」
懲りずにまたこっそりななしさんを盗みみれば笑っていて、それがすっごく可愛くてこっちまで頬が緩んだ。
「…仕方なかね…」
「は?」
「ななしさん!そこに居ったら危ないったい!」
「な!?」
『…え?わ、ぁ!』
名前が呼ばれて顔を上げれば目の前の花壇に黄色いボールがめり込んだ。
さらにその奥に目をやれば顔を真っ青にした千歳くんと満足そんな橘くんがいた
「ななななな!」
「千歳!ノーコンすぎるばい!」
「は、え…今、桔平が…」
「いいから!」
背中を押され歩き出せば当たり前だけどななしさんが近くなる訳で。俺の心臓は早鐘を打ち出した。
「ああああああの、」
『…今の千歳くんが打ったの?』
「え、あー…」
『ふふっ、千歳くんも失敗したりするんだね!テニス上手なのに』
ボールを渡そうと手を伸ばせば申し訳なさそうに受け取った千歳くんの顔は真っ青だったのから真っ赤に変わって、花壇を見てまた真っ青になった
「は、」
『は?』
「花!グチャグチャばい!」
『あー…うん。でもまた新しく植えるから大丈夫だよ!』
「ごめん!いつもななしさんが世話しとる花をこんな!」
『あはは!そんな慌てなくて大丈夫なのに!』
「そう言う訳にはいかんばい!こうなったら俺ん事一発ガツーンっと!」
『あは、あははは!千歳くん面白いね!』
そんなに面白い事を言ったつもりは無いけどななしさんはずっと笑ってて、気恥ずかしい半面なんだが心がポカポカした。こんな事ならもっと前から話しかけてみればよかった。そう、もっと前から…
「うを!」
『な、なに!?』
「(俺、今ななしさんとはな、話して…!)」
『ち、千歳くん…?』
「え、や、あー…(恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい)」
『?』
「テニスボールが待っとるばい…!」
『え?あ、千歳くん!…テニスボールどうしよ、』
突然走りだした千歳くんに手の中にあるテニスボールを渡しそびれてしまった。
『…ふふ、またお話出来るかな』
初恋リズム
「ききききき桔平!ははは話してななしさんが笑って花がグシャグシャに!」
「落ち着かんね…ところて千歳、後ろ」
「後ろ?…!!ななしさん!どどどどどうしよう桔平!」
いつもより早い心拍数がむず痒くて心地好い、