てにす

□そんな冬の日
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『寒っ!寒いよ光くんっ!』
「俺も寒いっすわ」
『ブッブー!今のは“暖かいココア買ってやんよ!”が正解でしたー!』
「…チッ、凍死しろ」
『(舌打ちされた…!)』




家までの短いような長いような、そんな距離を2人並んで歩いた。もう辺りは真っ暗で余計寒いような気がして自分で自分を抱きしめながら優しくない年下の彼氏を睨んだ。




『光、自販機あるよ!』
「へぇ」
『ココア飲みたいなー!』
「買うなら早よ買って下さいよ。俺も暇じゃないんで」
『…46円しかないもん…』
「ハッ、残念でしたね」
『(鼻で笑われた…!)』





歩く事で遠ざかる自販機を尻目にスタスタと進む彼氏に小走りで着いて行く。




『ココア飲みたかったなぁー…』
「残念でしたね、残金46円で」
『光が買ってくれたら美味しさ2倍なのになぁー…』
「へぇ。俺すごいっすね」
『…買ってよココア!たったの120円じゃん!』
「そのたった120円が出せへんとか…ぶふっ」
『(笑われた…!)』




家まではまだ距離があるし寒いしきっと凍死するんだって思ってたらコンビニがあった。2度目のチャンスに思わず光に目をやった。





『光!』
「寄り道したらあかんて部長言ってたんで」
『普段は言う事聞かないくせに…!』
「そんな、尊敬しとる部長の言う事聞かんなんて俺には無理っすわ」
『嘘くさっ!じゃあ何も買わなくていいから!ちょっとあったまるだけでいいから!コンビニ!』




私の願いがようやく届いたのか光が立ち止まってくれた。






『寄っていい?』
「ななし先輩に選択肢あげますわ」
『は?』
「1、何も買わんと20分だけ暖まりにコンビニに入る」
『ちょっ、』
「2、このまま大人しく帰る」
『光、待っ』
「3、」












「俺に暖めてもらう。」






「どれにします?」





答えなんて最初から決まってる







『光の手あったかいね!』
「ココアには負けますわ」
『ココアより光のほうがいいや!』
「…そうっすか、」








自分から言ったくせに照れる光を横目に見つつ、もう寒くないあと少しの距離をゆっくりと歩いた。






そんな冬の日


わざとゆっくりと歩く私に気付いて歩調を合わせてくれる優しい彼氏に心もあったまった。










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