てにす
□秋のち冬
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『ささささ寒っ!!』
容赦なく吹き付ける北風に私のライフはもう0に近かった。
「寒いんならジャージ着ればえぇやん。なんで体操服やねん」
「言うたんな謙也…ななしは今日不幸な日なんやから」
『黙れエクスタシー!そうだよ私は不幸だよ!朝来る時に荷物ひっくり返してジャージが水溜まりにドボンしたんだよ!!』
「…ぶふっ、」
『光ちゃんのアホ!笑いたきゃ素直に笑え!ってかジャージ貸して!!』
「嫌っすわ。」
『風も後輩も冷たいっ!早く春来て!』
今日は本当に寒いから皆珍しく長袖ジャージを着たまま練習していて、誰一人私にジャージを差し出してはくれなかった。皆ハゲればいい。
『ささささ寒いよぉぉぉ…!』
「かわいそうに」
『そう思うならジャージ下さい。それか春呼んできて』
「それは嫌やし無理や。代わりに今日は中の作業だけでえぇよ。風邪ひいたらあかんからな」
『し、白石…!今一瞬だけ白石がイケメンに見えたよ!でも間違いだって気付けた』
「そんなに水仕事したいん?ななしはドMやなぁ〜」
『ひぃ!すいませんでした!イケメン白石くん!』
「そんな格好で寒くなかね?」
フラリとようやく現れた千歳。これで今月20回目の遅刻。そんな千歳もやっぱり長袖ジャージを着てて憎くなった。寒くないわけがないだろ巨人め。
『寒いよ!寒いに決まってるじゃない!』
「千歳、えらい重役出勤やなぁ。なんか言う事あるんとちゃう?」
「うーん、先生に呼び出されてて遅刻しました。ごめんなさい?」
「今日お前だけ練習量2倍な」
「謝ったなのに怒られたばい」
『千歳ざまぁ!一人だけ暖かい格好してるからだ!長袖部分ちぎれろ!』
「それは関係ないわ」
『関係ないってさ!』
「2倍なら早く始めんと終わらんね、ほい」
『わぶっ!』
急に暖かくなった。ついでになんか重い。
『は…?』
「寒いって言っとったし、ちょっとでかいけど暖かいには代わりないから」
『いやいや!千歳寒いじゃん!』
「寒くなか。いいから着ときん、ふぇっきしょい!」
「…くしゃみば出たけど寒くなかよ」
『あははっ!千歳カッコ悪っ!でもありがとう!』
ヘニャッと笑う千歳に私も吊られて笑ってしまった。
部活が終わったらギュウッと抱きしめて温めてあげようと心の中で決めて私も部活に戻った。
秋のち冬
『千歳ー、ジャージのぽっけにどんぐりたくさん入ってるんだけどー』
「校舎裏にいっぱいあったから拾ったたい!」
「千歳、練習量3倍な」
「なんで!?」
早く練習終わりますように、
終
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どんぐり拾いまくる千歳はたまらなくかわいいと思う(^O^)