宵の明星
□第八章 開城
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部屋に入って呆然とする太守たち。それは膝の上にユーリ、そのすぐ横にユキ、下には三姉妹とレイユ…と女に囲まれたカイルの姿があったためだ。そしてカイルは太守たちに椅子をすすめ、座った後に話しかける。
「いやぁ、参りましたよ。いきなり父上が遠征軍をおこすなどと言い出しましてね。父上の熱が冷めるまでここで休ませてくれると嬉しいのだが…」
その言葉に少々呆れ気味の太守。
「はぁ…しかし…城外にお連れの軍も一緒に…ですか?」
「ああ。兵士たちならあのままほおっておいてかまわない。」
「そういうことでしたら…どうぞお好きなだけご滞在ください。」
ユキは気づかれないようにはあたりを見渡した。
《見張りの兵がたくさん…きっとミタンニ軍よね。きっと皇子は太守たちを油断させて…》
「まったく、戦争なんてかったるいことだ。そんなものは兄や弟に任せてわたしはここでゆっくりさせてもらおう。」
その間にユーリに手を伸ばし言いながらユーリにキスをするカイル。ダナ将軍から武勲をあげたことを聞かれるが弟に譲ってもらったと言いごまかす。そしてワインをユーリに口移し…やりたい放題だ。
《…油断させて…って皇子、絶対楽しんでるよねυ》
「ん?お前も飲みたいか?」
カイルは視線を向けたユキに冗談のように言った。思わず赤くなって顔をそむけるユキ。その様子を見ていた太守はカイルに問うた。
「そ、その方々はご側室ですかな?」
「ああ、かわゆいだろう。3月<みつき>ほど前に側室にあげた娘たちだ。この二人は姉妹でな。」
満面の笑みで答えるカイル。ユーリとユキをくるりとまわす。
「ほう、異国の姫ですな。なんと初々しい。」
「姉のほうはこうですがこれでなかなか大胆なヤツでしてね。特に寝所では妹のほうが…な」
そう言って二人を抱きしめるカイル。二人は不意の出来事で真っ赤になっている。
「どうした?眠くなったか。ああそうだろう。長旅で疲れたんだな。そーかそーか。」
一人で勝手に話を作っているカイル。イルがなにやら太守に耳打ちをしているがユキはそれどころじゃなかった。
《な、なんでこんな状況に…》
「どうぞ殿下、おやすみなさいませ。」
「ありがとう太守、ではおやすみ。」