CAIN
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支部の会議室に暗い面持ちで帰ってきた藍斗達を哲史が出迎えた。彼は自分が居ない事に疑問を持ち、きょろきょろする。
「全、トイレ?」
「…………全は…。」
悔しそうに顔を歪め藍斗が哲史に状況を話した。
すると哲史は藍斗の体をぱたぱたと叩きながら何かを探し始める。そして、彼のポケットから携帯を取り出すと会議室を飛び出した。まさか哲史が出て行くと思っていなかった藍斗意外の人間は呆然と閉まるドアを見詰める。
直感的に哲史が、自分の所に向かうつもりだと思った藍斗は彼を追うべく踵を返し会議室を出ようとした。しかし、我に返った淳にそれを制される。
「何で、哲史は良くて俺はダメなんだよ!!」
「これ以上、面倒を起こすな!第一、お前が行っても意味がねぇ!!無駄死にするだけだろ!」
自分を助けに行けない事に更なる悔しさを覚えた藍斗は、ぎりぎりと歯を鳴らした。
トイレから出た直哉達が真鍋に連れて来られたのは鑑識課だった。
中に入った真鍋は一人、残っている成年に近付いた。
「おい、宮埜!!」
声を掛けられた郁杜は作業をする手を止め真鍋に視線を移した。そして、見た事のない尋睹達を不思議そうに見詰める。
「真鍋さん。……そちらの方々は?」
「んっ、哲史の知り合いなんだと。
ところで頼みがあるんだが……。」
「何ですか?もしかしてパソコンを返せとか?」
「いや、返せというか少しの間こいつ等に貸してやってくんねぇか?」
苦笑いを浮かべて頼む真鍋に郁杜は溜め息を吐き、机の中からパソコンを取り出す。それは直哉達の探していたパソコンであり敵側も探していた物だった。
これで警察側の悪人を見付ける事ができる。
そう思った尋睹達はパソコンに近付く。すると廊下から急ぐような足音が聞こえた。
まさか、向こうも此処にパソコンがある事を知って来たのではと尋睹達はパソコンを隠すように立った。
しかし、彼等の行動は徒労に終わった。
急ぎ足で鑑識課に入った来たのは、支部から慌てて出てきた哲史だったからだ。
「哲史!!」
そこにいた全員が口を揃えた。
しかし哲史は、それに何の態度も示さぬまま、尋睹と直哉の間から見えるパソコンに向かって歩き、それを取る。
そして、それを持ち出そうとした。