CAIN
□05
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八坂が殺され少し経った頃、自分は例のドレスを着て亨の宿泊している部屋の前に立っていた。
亨がマフィアのボスだと分かった今、他の仲間の情報を得るには彼から直接聴いた方が効率も良く、逮捕するにも時間短縮できるのだ。その分、リスクも高くなるのだが……。しかし、そのような事を考えていては捕まえる事もできない為、自分は、彼にコンタクトを取った。
彼は意外にも簡単に自分に会うと自分の誘いを受けた。
そして今に至る。
今回の事に藍斗は危ないと自分を引き留めるが、仕事上、それを簡単に受け入れられるわけもなく自分は盗聴機やらを目立たないよう装備し万全を帰した。
深呼吸の後、こんこんと軽くドアを叩くと亨が出てきた。
「やぁ、いらっしゃい。待っていたよ。」
流暢に日本語を話す亨に自分は感心しつつ、緊張する気持ちを抑え中に入った。
部屋は最上階のスイートルーム。もし、此処で男だという事を知られたり警察だと分かったら一巻の終わりだ。
その事を考えると自分は緊張に身震いした。
大きなソファーに座るよう亨に促され自分は腰を下ろす。
彼は、隣に腰を下ろしワインを勧めてきた。それを断るのも捜査上、都合が悪いと思い、それを受ける。
「君が来てくれるなんて夢みたいだ。」
「はっ……はぁ。」
ワインを飲みながら歯の浮く言葉を浴びせられた自分は頬が引き攣るのを必死に抑えた。
ワインを少し口に含み、沈黙していると耳元から小さく声がする。
「黙ってても情報は得られねぇぞ、全。」
「…………あの、この間、頂いた物なんですけど。」
「あぁ、あれ。まだ、欲しいのかい?
良いよ、君は特別だし。此処で打っていくと良い。……たっぷりと…ね。」
不気味な笑顔を向けた亨は、合図を送るように指を鳴らした。