記念もの
□KYの恋人は質が悪い
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「だぁ、かぁ、らぁ、悪かった言うとるやないか!!」
「それが人に謝る態度なのか、蒔琅?」
淳の部屋に連れて来られた蒔琅は、ずっと謝りっぱなしだ。
しかし、その謝り方は謝罪しているようには見えなかった。どうみても反抗的で淳の怒りを買う事は請け合い。
案の定、淳は怒りの色一色に彼を見る。
それは、もう人というよりは鬼に近い形相で……。
そもそも、何でこんな事になったのかというと、哲史の話を聴く前の事、蒔琅は自身の仕事が終わったら淳と遊びに行く約束をしていたのだ。それも半ば強引な誘い方で蒔琅はノーと言えなかった。最早、約束というよりは命令の類いだったのだが。
内心、淳に苛められる為、行きたくなかった彼は哲史に話し掛け約束をスッポかそうとしたのである。
が、彼も支部の外まで逃げ出すような勇気はなく、あっさり淳に捕獲され今に至る。
「謝ったって許してくれへんくせに態度がどうとか言いなや。
だいたい、淳が悪いんやっ!!俺の事、苛めるさかい俺が約束をスッポかそうとするんや!」
「そうか。……じゃあ、お前の言葉通りに許してやらねぇから覚悟しろよ?
今日は、泣いても許さねぇから、そのつもりでいろ。」
ニヤっと何か企んだような笑みを浮かべる淳に蒔琅は、しまったという表情をして苦笑いを向けると部屋を出ようとする。
淳に背を向けず後退した蒔琅はドアノブに手を掛けるが、そこまで。部屋の外に出る事は許されなかった。淳に担がれたからだ。