記念もの

□君と出会った日
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 まるで初めて親から離れて親戚の家に泊まる時の心境だった。


 寂しいと思えば思うほど全の顔が脳裏をちらつき更に寂しさを増長させていく。


 自身の身体を抱き締めるように膝を抱え丸くなった哲史は、そのまま眠りに就いた。夢で全に会える事を信じて……。


 翌日、全達が帰って来たのは12時を少し回ってからだった。


 部屋に戻って来たのは全だけで藍斗は、外泊した事を淳に怒られていた。彼の仕事が自身に回ってきたからだ。


 その怒鳴り様は生半可なものではなく、チクリチクリと藍斗の痛い所を刺し、藍斗に文句のもの字も言わせないほどだった。怒られるような事をした藍斗が悪いのだが、その場に居た全員が彼に同情した。


 しかし誰も彼に助け船を出す事はなかった。否、出しようもなかったのだ。


 全は、藍斗が自身を何処かに連れ出す事を見透して早々と仕事を終わらせていた為にお咎め無し。寧ろ、全を見習えと淳の説教に拍車が掛かる事態を招いた。


「おかえり、全。」


「ただいま、哲史。はい、これお土産。ちょっと子供っぽかったかな?」


 そう言って全が哲史に渡したのは、ガラス製の小さな容器に丸い星の砂が入ったペンダントだった。


 それを受け取った哲史は嬉しそうに笑って、それを付けると全を抱き締める。


「凄く、嬉しい。」


 全は哲史の背中に手を回すと、ぽんぽんと軽く叩き穏やかに微笑んだ。


 ベッドに座った2人は、2人が出会った日の話をする。哲史が昨日、蒔琅達に話したと言ったからだ。


「あの時、哲史ってば俺の事、穴があくほど見てたよね。俺、そんなに珍しかった?」


「目。」


「目?俺の目がどうかした?」


「あの時の、全の目、輝いてた。だから、目、放せなかった。」


「あっ、あぁ。父さんと同じ警官になれたのが嬉しくってさ。もう、見るもの聴くもの全てが楽しくって嬉しくってだからだったと思う。」


 昔を思い出して全は懐かしそうに話した。


 すると哲史が小さく息を吐いて全の目を真っ直ぐに見ると真面目な表情を向ける。


「俺、全と、会えて、良かった。感情、表、出るようになった。俺、此処で、上手く、やってるのも、全部、全のお陰。」


「俺も哲史と出会えて良かったって思ってるよ。入署式のあの時だって、哲史の言った言葉がなかったら、きっと俺、今此処に居ないと思うし。
 俺が藍斗の事で深刻に悩まないでいられるのは哲史のお陰だよ。有り難う。」


 優しい笑顔を哲史に向けた全を再び抱き締めた哲史は、彼の頬に軽くキスをした。


 そして屈託のない笑顔を向けると、


「俺、全、大好き!!」


 真っ直ぐな気持ちを伝えた。


 哲史の気持ちに全は、ただ微笑んで彼を見詰めた。
 
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