記念もの
□記念日は君と二人で
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「全、今日は何の日か覚えてるよな?」
喫茶店でコーヒーを飲んで一息、入れていると藍斗が訊いてきた。
今日は、支部が担わなければならない事件もなく刑事としては暇な日で自分と藍斗は久々に2人で外出していた。
いつもだったら哲史が一緒に来るのだが、今日は尋睹に付き合い買い物に行っている為、此処にはいない。それが嬉しいのか藍斗は、いつもよりウキウキした表情を浮かべている。そういう自身の感情を隠さないところは藍斗らしいと自分は、くすりと笑った。
「何が可笑しいんだよ?」
「いや、藍斗は変わらないんだなぁと思ってさ。」
「なんだよ、それ。まるで俺が成長してねぇみてぇじゃねぇか。…じゃなくて、今日は何の日かって訊いてんだよ!」
持っていたコーヒーカップをテーブルに置いた自分が、にこやかに答えると藍斗はムッとした表情で言葉を返しコーヒーを飲み干した。そして更に言葉を紡ぐと自分を真っ直ぐに見詰める。
深緑の目に自分の顔が映る。
いつもは誰かしらがいて藍斗に見詰められてもあまり気にしなかったが、2人だけの時に見詰められると凄くドキドキする。まるで初めてデートした時みたいだ。
赤くなる頬をコーヒーを飲む振りをしながら誤魔化した自分は、小さく呟くように言う。
「俺と藍斗の交際記念でしょ。……俺が忘れるわけないよ。」
「だよなっ!!全なら絶対、忘れないと思ってたぜ。」
満足気な声で、子供のような笑顔で言う藍斗。
本人に言ったら怒られるけど、自分は彼のそんな表情を見ると可愛いと思ってしまう。
誰よりも何よりも大切な藍斗。
自分が愛してる、ただ一人の人。
今、こうして一緒に記念日を祝える事が一番の幸せ。
藍斗と2人でいるせいか、そんな事を考えてしまい自分は幸せな表情を浮かべて藍斗を見詰めた。
「なぁ、今日、何処行く?久々のデートだしよ。楽しい一日にしようぜっ!」
「俺は藍斗と一緒なら何処でも良いよ。」
「じゃぁ、海行こうぜ。俺、支部に戻って荷物、取って来っからさ。全、此処で待ってろよ。」
「えっ、俺も……。」
「ダメだ。他の奴等に見付かって邪魔されたくねぇから。」
立ち上がり藍斗と一緒に喫茶店を出ようとすると藍斗が自分を席に座るように手で指示して自身だけが喫茶店を後にした。