CAIN

□〇〇な秋
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部屋の中で鼻歌を歌って楽しそうな雰囲気を漂わせる全。
手に持った紙切れを見てはニコニコしていた彼は時計を見ると待ち合わせの時間なのか部屋を出ようとした。


「全、俺を置いて何処に行くんだよ?」

「えっ、内緒」



不満げにしている藍斗を余所に全は嬉しそうに笑って部屋を出ようとする。
しかし、藍斗に腕を掴まれ制される。

振り向く、全に藍斗は半ば強引にキスをした。


「んっ……」

「浮気は許さねぇ」


そう言って抱き締める藍斗の腕は鎖のようにきつく全を締め付ける。

嫉妬丸出しの藍斗にいつもの全なら溜め息の一つも出す所なのだが、今日はどういうわけかキュッと藍斗を抱き締め返した。


そして、見上げて藍斗を見るとにっこり笑う。

「じゃあ、藍斗も来る?」


「行く」

即答した藍斗に全は満足そうに笑って彼の手を引くと部屋を出た。





久々のそれも全から誘われたデートに藍斗は嬉々一色だったが、全が連れて来た場所を見て固まった。


「今日から秋のスイーツフェアが始まるんだけど一人じゃ持てないんだ」
ファンシーな洋菓子店の入口で立ち止まった全はニコニコしながら片手に持っていた紙を藍斗に見せる。


それは、先程、彼が見てニマニマしていた物で秋の果物等をふんだんに使ったスイーツの紹介が載っていた。




それを見ただけで藍斗の表情は青ざめていく……。
実は、この男、甘い物は大の苦手。その原因を作ったのは他ならぬ愛しい全。


また、あの悪夢が甦ると藍斗は逃げ出したくなったが、全に引っ張られ強制連行された。




カランカランとドアに付けられた飾りが鳴り、店員の声がして同時に甘い香りが漂う。


ショーウィンドウには沢山のスイーツが並んでいた。
それを端から端までマジマジと見た全は、うんと頷いて店員に
「このショーウィンドウに入ってるの全部、一つずつ下さい」
と言った。


瞠目する藍斗と他の客など視界にも入らないのか全は嬉しそうに財布から現金を出していく。



「また、一人で食うのか?」
「そうだよ」


当たり前のように言う全に藍斗は吐き気を覚える。



買った中にはホールが2、3個あった。それすらも一人で食べる全。なのに太らないし、1日で食べてしまう。いったい彼の腹はどうなっているのだと藍斗は不思議に思う。



5分後、運ばれて来た品物を取った全は当たり前のように半分、藍斗に持たせた。


「全、始めから俺を荷物持ちにしようとしてただろ」

「んー、まぁ。だって、言ったら来ないでしょ、藍斗」
「たりめぇ、だろ。けど、この見返りは貰うぜ」

「えっ!?」
「全の体で」
「ええー!!他じゃダメなの?」


「ダメだ。なんたってスポーツの秋だしな」



ニコニコ笑う藍斗に全は「(それは違うんじゃ)」と言おうとしたが溜め息だけが出た。

 

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