記念もの
□風紀委員には敵わない
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この頃、俺は早く家を出て学校に行っている。
理由なんて決まってる。あいつに…青山に絡まれたくないから。
遅刻すると校門で待ち構えられ小言は言うし、お仕置きと称してエロいことしてくるし、良いことなんかまるでない。それなら早く学校に行った方が、あいつに会う確率も低くなって必然的に絡まれることもないわけだから一石二鳥だ。
ただ、真面目になったみたいで嫌だ。もっと嫌なのは、こうなることも青山の計算の内だということ……。
結局、俺って、あいつの掌で踊らされてるんだよな。
腹立つくらいに……。
風紀委員には敵わない
はっきりした青色の空を綿菓子のような雲が飾る。
季節はすっかり夏で、朝も早いというのに太陽は容赦なく大地を照り付けている。それだけでも暑いのにセミが忙しなく鳴いていて気分的に暑さが増長される。
俺は胸元まで開けたカッターシャツに指を差し込みパタパタと動かす。しかし、生温い風が汗ばんだ肌を撫でるだけで全く涼しいとは思えない。ただ、ないよりマシという感じだ。
「あちー」なんて言いながらフェンスに囲われた空地の前をだらだら歩いていると前方に東高の不良連中が5人屯っている。東高は進学校だから不良でも見た感じは真面目っぽいが、さりげなくシャツを出してみたり腰パンしてたり髪をセットしてたりしている。
不良というより、ただの校則違反という印象を受ける。
何気にそういう印象を受けるように計算してたりするから東高の不良連中は狡賢いと、こちら側の人間には有名だ。
そんな奴等が、此処にいるのは珍しかった。奴等の通学路は、この道を使わない。使うとするなら、この辺に住んでいる奴等だけど、見たことない。
つまり、誰かを待ち伏せているわけだ。
また、俺じゃないよなー。
なんて思いながら近付いて行くと一人がフェンスに体を預けていた男に目配せした。それに、そいつはチラッとこっちを見て目配せした男に頷いてみせてから俺の方を向く。
やっぱり、俺かよ……。
「なんか用かよ?」
俺より20センチ近く高い男を臆することなく睨み付けた俺は、パタパタとカッターシャツを動かす。
「金髪の不良がいると聞いたが、お前か?」
「さーな。俺以外に金髪がいるなら俺じゃねーし。
つか、そういうの調べて来たんじゃねーの?アンタ等」
威圧的な目で俺を見下すリーダー各の男。けど、俺は、そんなの気にしない。あくまで挑発的な目付きで、そいつを見る。
こういうのは始めが肝心だ。相手に自分が弱いと思わせたら不利になる時があるし。逆もあるけど確率は低い。
気付けば男の仲間が俺を取り囲み今にも殴り掛かってきそうだった。
にしてもデカイ。どいつも俺より高くて、ただ囲まれただけなのに体が圧迫されてる気になる。
それで恐怖する俺じゃねーけど。取り敢えず売られた喧嘩は買う。それが俺のモットーだ。
カバンを放り投げ、拳を構え視線だけを動かし、どいつが先に仕掛けてくるか見極める。
「そこまでにして頂けませんか?」
一触即発状態を解くように聞き覚えのある声が後ろから聞こえ、俺は東高の連中と同時に声の方を見た。しかし、俺は図体のデカイ連中のせいで誰なのか見えない。
まぁ、見なくても誰かは分かってっけど……。