記念もの

□側にいたい
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「お前、まだ、終わってないのか、グスが」

「なっ!?」


机の上に溜まりに溜まった書類の山。
それに埋もれるようにしてヒー、ヒーと叫びながら途方もない仕事をしていると冷たい声が降ってくる。



声の主は分かってる。俺の教育係りをしている滝川 尚隆だ。

鬼、冷徹、Sとかいう言葉が、よく似合う男。だけど、仕事は一流だから皆、文句を言えないという、この上なくヤな奴。



俺が、こいつの世話になっているのも社長である親父が尚隆のことを気に入っていて、「君に任せたら愚息も立派な経営者になる」と言い出したのが事の発端。
以来、俺は、こいつのスパルタ過ぎる地獄の扱きに毎日、泣かされている。


「聞いてるのか?とっととやらんと夜が明けるぞ」

「なっ!!こんな沢山の仕事、入ったばっかりの俺にできるわきゃねーだろっ!!」

ダンッ!!
思い切り机を叩いた俺は、直ぐに後悔した。
山積みになった資料のバランスが崩れ俺に襲い掛かってきたからだ。



どうして、あいつの方に落ちないんだ。
落ちたら、落ちたで怖いけど……。


そう、考えると助かったと思うべきか。でも、あいつも痛い目に遭えばいいんだとも思う。





「ヒギャー!!」



叫び声を上げた俺に容赦なく資料は落ちてきて俺は椅子と一緒に床に倒れる破目になった。

まったく、泣けてくる。



顔の上に乗っている資料を退けると目前にオールバックの黒い髪。切れ長の目と漆黒の瞳。ストイックな顔立ちをした尚隆の顔があって俺は驚く。



かっこいい。
男の俺でも素直にそう思う。
思わず息を飲む。





これで、もう少し性格が良かったら良いのに……。



 
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