記念もの

□側にいたい
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部屋まで送り届け帰ろうとする尚隆に
「お礼にコーヒーご馳走するよ」
と誘い家に招く。



部屋の中に入った尚隆の表情(かお)は呆れを通り越して怒り一色だった。

「これは、人の家か?」



部屋中を見渡し口元をヒクヒクさせた尚隆。俺は頭を掻きながら
「そんなに散らかってっかなぁ?」
なんて笑ってみせた。




玄関からリビングに続く廊下にはワイシャツにズボン、靴下までが脱いだ順に放置。リビングには、カップ面の殻やらお菓子のクズが散乱し、寝室はベッドだけが無事で周りは、ゴミが散乱していた。



大学入学と同時に自立しろと親父に言われ億マンションを宛がわれたが、どうにも自立できてない気がする。
掃除なんてした事ないし……。







ブチッ!!


何かが切れた音がしたと思った瞬間、俺の頭に衝撃が走る。どうやら、こいつに殴られたらしい。



メチャメチャ痛くて俺は殴られた箇所を押さえ、その場に座り込む。



「いってーなっ!!殴るこたねぇだろう!!」

「黙れ、カス。いいか、俺は、こういう汚い場所が一番、嫌いだ。見てると虫酸が走る」





屈んだまま上を見上げ怒鳴る俺を鋭い目付きで睨む。
まさに鬼。



そして、手を差し出し何か要求する。





「何、この手?」

「ゴミ袋」



早くしろと言わんばかりの手付き。しかし、俺は、その単語を聞いた事がない。
だって、掃除なんて使用人が俺のいない間にしてたし……。


大学に行くまで自分がいない間に部屋は綺麗になるのだと本気で思ってたくらいだ。
だから凄い片付け下手。っていうより全ての家事が俺にはできない。




自分でできないなら人を雇ってしてもらえば良い。



そう思う俺は典型的な金持ち気質。




首を傾げる俺を見下す尚隆の目は信じられないものでも見るような目をしてる。そして深々と溜め息を吐いた。




「要る物と要らない物に分けておけ」

「はっ!?」



「聞こえなかったか?片付けるから要る、要らないを分けろと言っている。俺は、ゴミ袋を買ってくる」

踵を返し玄関のドアに手を掛けた尚隆は、思い出したように振り返る。

「俺が帰ってくるまでにやっておけよ。もし、終わっていなかったら……殺す」




普段、冗談の一つも言わない人間が言うと全く冗談に聞こえやしない。


寧ろ尚隆のキャラから考えると本気としか思えない。




さすがに殺されはしないだろうけどボコボコにはされそうだ。あいつ見た感じスゲェ喧嘩とか強そうだし……。


俺が敵うとは、到底思えない。というより尚隆に勝るとも劣らないものって俺にあるのか?





 
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