短編

□あるモノの価値
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今日は朝から昨夜の雨の所為で蒸し暑い日だった。
何時もは涼しい森の中でもこんなに蒸し暑いのだ、人里はもっと暑いのだろう。なら客の期待は出来ないな。そう思い、僕は何時ものようにある道具の手入れをしていた。
その道具の名は『天叢雲剣』。以前魔理沙のミニ八卦炉を強化した時に、報酬として引き取った大量の鉄屑の中に紛れていた物だ。
この刀には数多くの伝承が残されており、火災を静めるために草を薙いだ事で草薙の剣の別名が与えられた事は有名だ。
が、一方では『神器で草を薙ぐなど考えられない』という客観的な意見から、草薙の剣と天叢雲剣は別の物なのではないかという声もある。だが、僕の目にはこの刀の名は『天叢雲剣』と映っており、用途は『降り掛かる災禍を祓う』とある。
ならばあの火災は、誰かがヤマトタケルに危害を加えようとして意図的に起こした事だったとすれば。
もしそうなら天叢雲剣と草薙の剣は同じ刀なのだ。その者の勝手な価値観で勝手に違う刀にされてはこの刀も面白くは無いだろう。
価値観の違いといえば、前のこの刀の持ち主であった魔理沙が頭に浮かぶ。
このような強力な力を持つ道具を何処で拾ったのかは知らないが、他の鉄屑と一緒に置いていた辺り、この刀の本当の価値になど少しも気付いていないに違いない。
それにこれを持っていたという事は、こんな道具が落ちている場所を魔理沙は知っている事になる。一体何処からこんな道具やあの量の鉄屑を拾ってくるのだろうか。
今度強化を頼みに来たら聞いてみようか、それよりもあの魔理沙がそう簡単に教えてくれるだろうか?いや、可能性は零じゃない。零じゃないなら、掛けてみるべきか。
そんな事を考えながら、昼過ぎまで天叢雲剣の手入れをしていた。
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