《 MK ◆ TK 》
□《真夏の夜の夢》
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その日は。
天気予報では一日中晴天と予測されていたが。
昼頃から次第に空は雲を羽織り、夕方近くには小雨が大雨に変わった。
そんな予報士泣かせな天候の中。
湿気で濡れた前髪を気にしながら、田崎敬浩は慣れたホームに降り立った。
改札を抜け、雨粒だらけの通路を歩く。
そのまま外に出ようとしたが。
やべえ…、電車に傘を忘れた。
先ほどまで持っていた傘がないことに気がついた。
周りを見渡せば、途方にくれているらしきサラリーマンや親子連れ。
もちろん、駅に面しているコンビニエンスは、傘が品切れになっており。
タクシーを拾うほどの距離ではない、自宅マンションへの道のりが恨めしく思われる。
もう少し止むまで、待つか…。
仕方なく敬浩は近くにあった柱に背中を預け、相棒のiPodに指をかけようとしたが。
ふと。
自分の目の前で立ち止まった靴が、気になった。
見覚えのある、スニーカー。
「あれ…、タカヒロ?」
これまた、聞き慣れた声。
少しだけ目線を上げると。
「眞木、さん?」
数時間前まで一緒に仕事をしていた、眞木大輔だった。
「あ、お疲れさまです」
咄嗟に出た挨拶に、眞木は苦笑したような表情をした。
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