《 MK ◆ TK 》

□《真夏の夜の夢》
1ページ/23ページ



その日は。
天気予報では一日中晴天と予測されていたが。
昼頃から次第に空は雲を羽織り、夕方近くには小雨が大雨に変わった。



そんな予報士泣かせな天候の中。

湿気で濡れた前髪を気にしながら、田崎敬浩は慣れたホームに降り立った。




改札を抜け、雨粒だらけの通路を歩く。

そのまま外に出ようとしたが。




やべえ…、電車に傘を忘れた。



先ほどまで持っていた傘がないことに気がついた。

周りを見渡せば、途方にくれているらしきサラリーマンや親子連れ。



もちろん、駅に面しているコンビニエンスは、傘が品切れになっており。
タクシーを拾うほどの距離ではない、自宅マンションへの道のりが恨めしく思われる。




もう少し止むまで、待つか…。



仕方なく敬浩は近くにあった柱に背中を預け、相棒のiPodに指をかけようとしたが。



ふと。
自分の目の前で立ち止まった靴が、気になった。



見覚えのある、スニーカー。




「あれ…、タカヒロ?」


これまた、聞き慣れた声。



少しだけ目線を上げると。



「眞木、さん?」



数時間前まで一緒に仕事をしていた、眞木大輔だった。



「あ、お疲れさまです」



咄嗟に出た挨拶に、眞木は苦笑したような表情をした。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ