真田連載
□プロローグ
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「私、真田のお嫁さんになりたい!」
マネージャーの唐突な申し出に、俺は手にしていたラケットを落としてしまった。
「えー、綾先輩、真田副部長より俺にしといたほうがいいッスよ」
「赤也は弟役で十分かな」
「じゃあ俺はどうじゃ?」
「仁王は浮気激しそうだから却下」
「俺は?いい夫になるぜぃ」
「食費大変そう…」
固まる俺などまるで蚊帳の外、とでも言わんばかりに米倉の周りに居た赤也達が話を盛り上げる。
今の発言は…米倉の、気まぐれなのか。
いや、いずれにせよ言葉一つに動揺するなどたるんどるぞ、弦一郎!
「くだらん」
練習に戻る
そう言って落としたラケットを拾い上げ、コートに向かおうと米倉達に背を向けた瞬間、不意にジャージの裾を掴まれた。
なんだ、まだ用か。
怪訝な顔をして振り返ると米倉が泣きそうな表情で俺のジャージを掴んでいた。
「…なんだ」
「真田のお嫁さんになりたい」
「……」
それは先程も聞いた。
だから俺にどうしろというのだ。
というかその目はなんだ。
心臓に悪いから止めてくれ。
「どうしたらなれる?」
どうしたら と聞かれても返答に困る。
第一何故米倉は俺の妻になりたいなどと言い出したのだ。恋人でもない米倉が、何故。
無言のまま思考を巡らせていると米倉はじゃあ、と切り出した。
「聞き方を変えるね。
真田の“お嫁さんにしたい女の子のタイプ”を教えて!」
カラン
軽い音をたてて再び地面にラケットがぶつかった。
……女子のタイプ、だと…?
「……そ、」
「そ?」
「そのような事を聞くなどたるんどる!!」
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