記念小説

□僕の喜びを君に
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 「もういいですか?」


 「うん、もういいよっ!」


 王子の返事が聞こえた。
 俺は机に伏せていた顔を上
 げた。
 瞬間、周りが急に暗く
 なった。
 俺は心臓が音を立てている
 のを確認しながら、王子の
 名前を呼ぶ。
 「王子、無事ですか!?」
 暗闇の中、俺は王子を探す。
 と、電気が点いた。


 「無事だよスカイ」


 俺のすぐ目の前に、王子の
 顔があった。
 俺は驚いて、後ずさりをす
 る。
 王子は憎めない笑顔で、俺
 を見つめていた。
 「驚いたっ?
 僕からのサプライズ」
 「サプライズって…それに、
 これは一体…」
 知らないうちに、小さなケ
 ーキがひとつ、大きな机の
 上に置かれていた。
 ケーキ以外に、飲み物も何
 もない。
 「スカイ、今日は何日だ?」
 「今日は6月10日です」
 「大正解!」
 王子はにこにこと、ケーキ
 に蝋燭を立てていく。
 「あの…、」
 「今日は僕たちの物語が始
 まった日だよ。
 そしてもうひとつ、」
 王子はケーキを俺の目の前
 に差し出した。


 「お誕生日おめでとう!」


 ***


 今日はスカイの誕生日。
 彼に伝えたいことがある。


 "僕の喜びを君に"。

 
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