記念小説
□僕の喜びを君に
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しばらくして、王子が部屋
に戻ってきた。
小さな箱を、大事そうに抱
えながら。
「お待たせっ。
スカイってば自分の誕生日、
毎年毎年忘れてるんだもん。
今年も忘れてたみたいだし
ねっ?」
「すみません」
「だから、記憶に残るもの
をプレゼントしようと思っ
たんだ!」
王子は小さな箱を、俺に差
し出した。
俺は箱を受け取る。
深紅色の大人びた箱は、高
級感が漂っている。
「スカイの目の色に似てる
箱だよねっ。
綺麗だったから、つい箱ま
で買っちゃったよ☆」
で、と言葉を付け足す。
「自分で包装したんだよ。
どうかなっ?」
すごく綺麗だ。
まるで、店員の人が包んだ
かのよう。
王子はとても器用だ。
「とても上手ですよ。
開けるのが勿体ないくらい」
「ありがとうっ。
勿体なくても、開けてほし
いなっ!」
俺は息を呑んだ。
確か昨年はスーツを貰った
んだ。
いかにも高そうなスーツに、
面食らった覚えがある。
今年も面食らうようなもの
だろうか…?
少しどきどきする。
「では、開けますね」
「もちろんっ」
俺はリボンに触れた。
***
どきどきするなあ。
スカイがプレゼントを開け
ようとしてる。
どんな反応をしてくれるの
か、わくわくする反面、が
っかりしないだろうかとい
うどきどき。
二つの気持ちがぶつかり合
って、胸がいっぱいになる。
緊張の一瞬。
僕は思わず目を閉じた。