記念小説

□僕の喜びを君に
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 ***


 「え…どうして、」
 「誕生日なんだから、祝う
 のは当然だよっ」
 王子が蝋燭に火を点ける。
 「王子、火を扱うのは危な
 いですよ。
 俺が点けます」
 「子供扱いしないでよっ。
 僕だってひとりで出来るん
 だからっ」
 「もし火傷でもしたら、ど
 うするのですか」
 「大丈夫大丈夫」
 すべての蝋燭に火が点った。
 いびつなチョコレートのプ
 レートに、にょろにょろと
 俺の名前が這っている。
 生クリームの上に飾られた
 フルーツが、失敗したプレ
 ートをカバーしていた。


 「もしかして、王子が…」


 すぐに分かった。
 俺の言葉に、王子が口を尖
 らせた。
 「僕から言おうと思ってた
 のにっ。
 スカイに見破られちゃった。
 っあスカイ、蝋燭が溶ける
 前に、火を消してよっ!」
 「俺が…ですか?」
 「スカイの誕生日だから、
 当たり前だよっ」
 王子に急かされながら、俺
 は蝋燭に向かって息を吹い
 た。
 一瞬にして、火が消えた。


 ***


 スカイ、お誕生日おめでと
 う。
 初めてケーキを作ってみた
 んだ。
 スカイの口に、合うといい
 なあっ。


 僕の気持ち、伝わるといい
 な。

 
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