番外編

□あいつの本気
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 空は澄み渡るくらいの快晴。
 外で過ごすのには丁度良い
 気候だった。
 俺はいつもと同じ、執事の
 仕事をこなす。
 どれだけ年が過ぎても迷子
 になってしまいそうなくら
 い広い城にも、やっと慣れ
 てきた。


 洗濯物が入ったカゴを抱え
 ながら、俺は庭先へと出る。
 爽やかな風が頬を撫でた。
 「今日はよく乾くな」
 洗濯物をカゴから出そうと
 身を屈めたときだった。


 「こんにちはスカイ君」


 突然誰かに話し掛けられ、
 内心どきっとしながら声の
 した方へ向く。
 ふわふわした長い茶髪に群
 青色の垂れ目、ぱっと見は
 女性というか女の子という
 か。


 そう…アギだ。


 アギは虚ろな瞳で俺を見つ
 めていた。
 「どうしたんだ、王子が迎
 えてくれなかったのか」
 「違いますよぉ。
 今日はスカイ君とやり合い
 たくて来たんですよぉ」
 「…やり合い?」
 はい、と見た目からは想像
 しにくい低音でアギは答え
 た。
 「やり合いって…何を」
 アギはあっさりとこんなこ
 とを言ってきた。
 「ボクの練習相手…銃の練
 習相手になって下さいスカ
 イ君」
 「…は?」
 「お願いします。
 怪我は極力しないようにし
 ますからぁ」
 何故俺がこいつの練習相手
 なんかに…?
 今までみたいにディルカや
 ユリスに手伝ってもらえば
 いいような気がするんだが。
 「スカイ君じゃないと駄目
 なんですよぉ」
 アギはにこりと微笑んだ。
 俺は溜息を吐く。
 「分かった。
 仕度するから待ってろ」
 何故アギが俺とやり合いた
 いのかは知らないが、悪い
 予感ばかりが渦巻くのは目
 に見えた。

 
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