記念小説

□花の結ぶ先
3ページ/10ページ



その頃雲の上よりも遥か上の世界、いわゆる天界で私はお茶を楽しんでいた。向かいには天界の長が座っている。私は感情神、早坂玲。人の無駄な感情を集め、後の人生を幸せにするのが仕事である。そんな私の元に郵便配達を仕事とする天使がやってきた。私は微笑みながらそれを受け取る。紅茶の甘い香りが辺りに漂った。私は封を切って手紙を読む。中には可愛らしいピンク色の丸い文字でこう書かれていた。
――こんにちは、玲ちゃん。時間があったらまたこっちにおいで。今度はリッちゃんやインティゴとお茶会しよう!王子の薔薇園で待ってるね。 リイル=フレイヤ
一瞬私はリイル=フレイヤって誰だっけ、と首をひねる。そして、あの世界で会ったツインテールの女の子のことを思い出した。今度はあの2人か。意外といいかもしれない。ついでにスカイ達とも会えるし……。私は頬が熱くなるのを感じた。

「ねえ」

私の声に長は顔を上げた。

「また招待状が来たの。あの世界から」

もうこれで十分なはず。長は優しく微笑みながら異世界へと通じる穴を開いた。

「ありがとう。でもまた変なところに落とさないでよ」

「分かった。玲、行ってらっしゃい」

その言葉に見送られ、私は異世界へ旅立つ。優しい風が天界を流れた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ