番外編

□青空に堕ちる鳥
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がしっ。


「…?」
「お前は馬鹿か!」
頭上から聞こえてきた怒声。
ボクは顔を上げた。
そこにはディルカがいて、ボクの腕をしっかりと握っていた。
「…離して」
「離すわけないだろ!
先日お前を取り戻したばかりなのに…もう失いたくないんだよ!」
また響く怒声。
思わずボクは目をつむる。
「そんなマイナスなことをするのはやめろ。
後で後悔するのはお前なんだよ。
今日が駄目なら、きっと明日いいことがある。
これくらい強く心を持て!」
ディルカは勢いに任せ、ボクの体を引き上げた。


再び地に足を付けた。
向かいでディルカが息を荒げている。
「どうしてここに…」
「下を歩いてたら柵に捕まってるお前を見付けてさ、そしたらお前、柵を越えるんだもんな…冷や汗かいた」
何故かディルカは笑みを浮かべていた。
怒られると思った…。
「まあ何より、お前が無事でよかった」
ボクの頭をくしゃくしゃ撫でる。
スカイ君が王子さんを撫でるように。
すごく胸が高鳴った。


「明日はまた写生でもするか!」
ボクの数歩前を歩くディルカが言う。
「次はどこに行きたい?」
「…ボクね、写生以外にやりたいことをひとつ見付けたんだけど…」
ディルカが立ち止まる。
「やりたいことって何?」
背中を向けたまま、ディルカが問う。
ボクは背中を眺めながら、口にした。


「探し物…明日なら見付かる気がする」


ディルカが振り向いた。
怪訝そうな顔でボクを見ている。
「その探し物って何だ?」
ボクは答える。
「分からない。
ボクにはきっと、分からない探し物」
ディルカは硬直した。
少し考える振りを見せながら、確かにボクの目を見て、
「探しにいくか、それ」
ディルカの目は、輝いていた。
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