番外編

□黒の不協和音
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***


目を開ける。
ぼやけて見える視界。
目を擦った。
「スカイ…?」
見えた、大切な人の顔。
怠い身体を起こす。
「王子、俺は…」
急に抱き着かれ、俺は体勢を崩し、毛布の上に倒れ込んだ。
王子が微かに震えている。
「心配したんだから!
熱があったんでしょっ?」
あれ…そうなのか?
俺は王子の言葉に傷付いたのかと。


じゃあ、あれは夢…?


堕ちていく夢、転がる夢、暗い暗い世界。
すべて夢だというのか?
にしても、リアルな夢だった。
身体にはまだ痛みが残っているように感じる。
本当に転がったわけでもないのに、不思議だ。
「熱はもう無い?」
王子が俺の額に手をつけた。
俺より温かい手が、額から熱を感じさせる。
「全然無いねっ。
スカイは毎日毎日無理し過ぎているんだよっ。
ちゃんと休養を取らないと駄目、身体が持たなくなっちゃう!」
きびきびした動きで、王子が俺の看病をしてくれている。
思わず見入ってしまう。
無駄のない動きだ。
見入っている俺に違和感を感じたのか、王子が少し首を傾げた。
「ん、どうかしたっ?」
「え、いや…何でもないですよ」
俺はすぐにそっぽを向いた。
王子は特に深入りしようとせず、淡々と看病を熟していた。


「今日はしばらく安静だからねっ。
動いたらユリスがスカイのこと虐めるって言ってたよっ!」
「何なんですかその脅し」
「そうユリスが言ってたんだよっ」
さらりと怖いことを笑顔で零した王子。
ユリスのことだ、何をするか知ったもんじゃない。
仕方ない、落ち着かないが安静にしよう。
「じゃっ、スカイの分も仕事頑張るねっ」
「お願い…って、俺の仕事を代わりにするんですか!?」
「そうだよーっ」
「そこまで気遣いは…看病だけでじゅうぶんですよ!」
「平気平気、じゃっ」
俺の話も聞かず、王子は部屋から出て行った。
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