番外編
□黒の不協和音
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俺はふと、気が付いた。
傷だらけの身体を引きずって、頭を掻き回す。
俺の見る夢は、きっと手を伸ばしても届かない夢だと。
頭の中で浮かぶ幅広い年齢層の笑顔。
きっと、俺の家族や知り合い、そして今を一緒に過ごしている仲間だ。
この温かさに、俺は今まで支えられて来たのだ。
しかし、気付くのが遅過ぎた。
だんだんとモノクロの世界へと変わる。
見たくない、触れたくない世界。
転がることを今更止めることが出来ない。
俺はただ重力に従って転がる。
目が回っても止まらない、止まれない。
誰が俺の暴走を止めてくれるんだ?
俺の成りの果ては何だ?
向こうの色に届くのはいつだ?
重なる声が聞こえないのは何故だ?
たくさんの疑問が俺に覆いかぶさる。
ふと浮かんだ失敗の数々。
あんなに輝いていた空が静かに歪む。
俺は手を伸ばす。
色に届かないことくらい知っている。
でも、あの青をこの手で掴みたかった。
目の前に坂道が見えた。
俺を誘うように、存在感をあらわにして。
目眩がした。
俺は、高い高い頂から坂道へ急降下した。
周りの景色が微かに歪み始めていた。
あの人の手を握れたら。
もう届かない夢を想い、ただ落下した。